特集●歴史の転換点に立つ

米軍属の女性暴行・殺害事件の問うもの

容疑者ケネス・フランクリン・シンザトとは誰か?

流通経済大学教授 宮平 真弥

はじめに

2016年5月、沖縄で女性暴行・殺害・死体遺棄事件の容疑者が逮捕された。容疑者は元海兵隊員の米軍属、ケネス・フランクリン・シンザトとされている。本稿は、日米地位協定及び日米密約、そして社会にはびこるミソジニー(女性嫌悪)を取り上げ、なぜ米兵犯罪が後を絶たないのか、どうすれば再発を防げるのか検討する。

1.沖縄の自責、本土の無関心

容疑者逮捕後、『月刊琉球』(Ryukyu企画)2016年7月号は、「改めて軍事基地被害を考える」を特集した。いくつか紹介する。浦崎成子は「性暴力事件を防ぐジンブン、知恵も沖縄人にはないのか」、「(沖縄人は-筆者注)『再発防止、綱紀粛正』のお題目を唱える二次性暴力加害者たちと何ら変わることもない」と記している。T署名による「追悼・抗議集会」報告では、6月8日の沖縄での追悼・抗議集会における「『なぜもっと基地問題解決にむけて頑張れなかったのか』と自責の念にかられるという声」が紹介されている。

比嘉明子は「ヤマトに住み、生活している自分がヤマトに同化し、その結果沖縄を抑圧する側になってしまう。そうはなりたくない」と記した。島袋マカト陽子は「私の中にある怒りは外に向かってでもあり、自分に向かってでもある」、「同じ言葉しか発せない私。その自分自身に怒ります」と記した。筆者は、自分自身「犯罪に加担する側にいた」と書いた(後述する、フィッシャーさんの事件に対してだが)。

「自責」の言葉が連なったことは、事件に責任を感じ、自分も加害者だと認識している沖縄人が多数存在することの証左である。Seals Ryukyuの玉城愛は、「安倍晋三さん。日本本土にお住まいのみなさん。今回の事件の『第二の加害者』は誰ですか。あなたたちです」、「私に責任がある。私が当事者だという思いが、日に日に増していきます」と訴えた(琉球新報、2016年6月20日)。この発言は、2016年6月19日、事件に対する追悼・抗議の「県民大会」(那覇市)で発せられた。県民大会には6万5000人の参加者があった。沖縄県の人口は約140万人である。

同日、東京(国会前)でも「県民大会」に呼応する抗議集会が開催された。参加者は約1万人。日本国の人口は約1億2700万人。首都圏だけでも約3600万人。本土の無関心はどうしたものか。なぜ、沖縄人が自責にかられ、本土のほうは無関心でいられるのか?

沖縄で米軍人・軍属の犯罪が後を絶たない原因が、巨大な米軍基地の存在にあることは明白だ。2016年7月10日の参院選、沖縄の有権者は「辺野古埋め立て反対」から「容認」に寝返った島尻安伊子を落選させ、元宜野湾市長の伊波洋一を当選させた。これで、沖縄の有権者が選んだ衆・参の国会議員はすべて辺野古埋め立て反対派となった。(自民党沖縄県連の衆議院議員は、沖縄選挙区で落選、九州比例ブロックで復活当選)。日本国全体では衆・参とも「改憲勢力」が三分の二になった。沖縄に米軍基地を押し込めてきた政権政党を支え続ける本土の有権者。

駐留軍用地特措法改悪(1997年)、地方分権推進一括法制定(1999年)により、沖縄の土地を総理大臣の一存で取り上げ、米軍に供することができるようになった。どちらも日本国の国会で、圧倒的多数の賛成で成立した法律だ。こんな人権侵害を推し進める議員ばかり選んできた本土の有権者の責任は小さいものではない。

1952年の段階では、日本本土に約13万5200ヘクタールの米軍基地が存在し、沖縄のそれは約1万6000ヘクタールだった。しかし、本土から沖縄に米軍基地は移転し続け、2014年には、本土約8000ヘクタール、沖縄約2万2700ヘクタールになっている。

事件の加害者は誰なのか?

2.日米地位協定、日米密約

日米地位協定17条は、「米兵の犯罪について、公務中の犯罪は、すべて米軍が裁判権を持つ」、「公務外の犯罪は、日本側が裁判権を持つが、容疑者が基地内に逃げ込んだりして、身柄がアメリカ側にある時は、日本側が起訴するまで引き渡さなくてよい」という内容だ(『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』)。日本国の捜査機関が容疑者の身柄を確保しなければ証拠を押さえることは難しく、起訴することも困難となる。日本側からの起訴を抑止する規定である。米兵ら(軍人、軍属、その家族)は、罪を犯しても、基地に逃げ込めばなんとかなるという意識を持つ。欠陥だらけの地位協定であるが、さらにこれを骨抜きにする密約が存在した。

日米地位協定の前身は、1952年に締結された日米行政協定である(1960年に名称が日米地位協定となる)。第2次大戦敗戦後、占領下の日本には、米兵らに対する裁判権はなく、米兵犯罪は「治外法権」状態だった。当初、行政協定も「治外法権」のままだったが、1953年、「公務外の米兵らの犯罪については日本側が第一次裁判権を持つ」と改定された。

ところが、1953年10月28日、日米合同委員会で、日本側委員長が声明し、署名した以下のような文書がある。「日本の当局は通常、合衆国軍隊の構成員、軍属、あるいは米軍法に服するそれらの家族に対し、日本にとって著しく重要と考えられる事件以外について第一次裁判権を行使するつもりがないと述べることができる」。

この声明は、行政協定改定を骨抜きにするものだ。よほどの事件でない限り日本国は裁判権を行使しない(起訴しない)という裏約束であり、実態としては占領下の治外法権とほとんど変わらない。また、日本の捜査機関が米兵容疑者を逮捕した場合も、ほとんどの事案で米軍に身柄を引き渡す、との密約も存在する。これらの文書は、2008年に新原昭治が、米国公文書館で発見した。

新原昭治は、この密約がいまも守られていると明言する論文も発見する。在日米軍法務部のデール・ソネンバーグが、「日本は非公式な合意を結んで、『特別な重要性』がない限り、第一次裁判権を放棄することにした。日本はこの合意を忠実に実行してきている」と記していた(「駐留軍隊の法律に関するハンドブック」所収、オックスフォード大学出版、2001年)。

2001年から2008年のデータでは、米兵による強姦の起訴率は26%(日本全体では62%)、強制わいせつは11%(同58%)、傷害・暴行が27%(同58%)、窃盗は7%(同45%)だった。公務執行妨害、詐欺、横領は0%だった。密約は「忠実に」実行されている(『日米密約 裁かれない米兵犯罪』、『密約 日米地位協定と米兵犯罪』等参照)。

沖縄県警によると、「1972年の本土復帰から2014年までの米軍人・軍属とその家族による刑法犯罪の検挙件数は5862件だった。うち、殺人、強盗、放火、強姦(ごうかん)の凶悪事件は571件で737人が検挙された」、 「性暴力も繰り返され、強姦事件は未遂を含め、検挙されただけで129件に上る」(沖縄タイムス、2016年5月20日)。この数字は検挙件数であり、実際の事件数はこれよりはるかに多いだろう。地位協定、密約の存在が、米兵犯罪を助長している。

元在沖海兵隊員のアレン・ネルソンは「街でどんな悪行を働いても、基地のゲートをくぐってしまえば、私たちは逮捕されることはなかった」と証言している。

これまでも沖縄県は地位協定改定案を作成し、日本政府に訴えてきた。しかし日本国政府は検討もせず、「運用改善で対応」を繰り返す。今回の事件後、沖縄県議会は、地位協定抜本改定と海兵隊撤退などを求める決議と意見書を採択した。あて先は「内閣総理大臣と外務、防衛、沖縄担当の各大臣。抗議決議は駐日米大使、在日米軍司令官、在日米軍沖縄地域調整官、在沖米総領事」(沖縄タイムス、2016年5月27日)。ちなみに安倍晋三首相は、事件後、オバマ大統領との日米会談で、地位協定改定に触れもしなかった(琉球新報、2016年5月26日)。

米兵らの犯罪を被害者の側から考えると、巨大な米軍基地がなければ、受けなくてもよかった被害である。地位協定が改定され、密約が破棄されていれば、多くの事件を防げただろう。米軍基地を撤去できず、地位協定改定及び密約を放置している政府及び本土在住者は、多数の基地被害者を生み出した「結果責任」を負っている(筆者もその一人である)。

米兵犯罪が頻発する原因は、地位協定だけではない。筆者は、社会に蔓延するミソジニー(女性嫌悪)も、女性への犯罪については無視できない要素だと考えている。あるレイプ事件を通じてこのことを考察する。

3.社会にはびこるミソジニー(女性嫌悪)と性犯罪

キャサリン・ジェーン・フィッシャーさんは、2002年4月、ホテルのバーで米兵に薬を盛られ、車に連れ込まれて強姦された。横須賀警察署に被害を訴えるが、警察官は、「身を守る術もないわたしの体に何度も何度も焼き印を押した-不審者。クズ。尻軽。娼婦」。男性警察官は、「どんな風に犯されたのか説明しなさい」と言い放ち、現場で事件を再現させた。明白なセカンドレイプだった。

彼女は横須賀米軍基地で、加害者同席の聴聞に出席したが、「米軍は、大事な水兵をいかなる罪でも告発するつもりはない」と告げられた。容疑者は米軍に身柄を拘束されたが、日本の裁判所も米軍の軍法会議も不起訴とした。彼女は民事訴訟を提起するが、訴訟の最中に、米軍は被告の米兵を除隊し、行方が分からなくなる(後に、この米兵がアメリカに帰って、性犯罪を繰り返し、被害者が増え続けたことが判明する)。2004年11月、民事訴訟の判決は原告勝訴となるも、被告も米軍も損害賠償せず、日本国の防衛省が見舞金を支払った。

その後、彼女は10年もかけて加害者を探し出し、2012年、ウィスコンシン州の民事訴訟で勝訴するが(賠償金1ドル)、刑事事件としては、結局不起訴になっている。米軍と日本の司法は地位協定、密約に従い、全力で米兵犯罪者を守り、全力で被害者を攻撃し、尊厳を踏みにじった。彼女は、横須賀警察署で想像を絶する人権侵害を受け、彼らを「女性嫌悪者(ミソジニスト)の無神経な警察官たち」と表現している。警察官や米軍高官、日本の官僚がいかに彼女の尊厳を傷つけたか、『涙のあとは乾く』を、ぜひお読みいただきたい。

上野千鶴子はミソジニーに「女性嫌悪」、「女ぎらい」、「女性蔑視」という訳語をあて、奥本大三郎を引用し、「自分を性的に男だと証明しなければならないそのたびに、女というおぞましい、汚らしい、理解を超えた生き物にその欲望の充足を依存せざるを得ないことに対する、男の怨嗟と怒りが-女性嫌悪である」と記している。

また、佐藤裕を参照し、男性が女性を見下す言動をとるとき、それは女性ではなく男性に向けられており、女性を他者化することで「同じ男たち(われわれ)を構成する」と述べている。

また、彦坂諦を引用し、戦時強姦がしばしば仲間の面前で行われる公開の強姦だったり、仲間同士の輪姦だったりするのは、「戦時強姦の目的は男同士の連帯を高めるため」だからだと記している。別の個所では、「自分は女ではないというアイデンティティだけが、『男らしさ』を支えて」おり、「輪姦は性欲とは無関係な集団的な行為であり、男らしさの儀礼である」と説明している。

1995年の沖縄少女暴行事件は、米兵3人による輪姦だった。沖縄返還の1972年から2010年までに、強姦(未遂含む)の検挙件数は130件、人数は147人(『沖縄の〈怒〉』)。検挙件数より人数のほうが多いということは、複数犯による輪姦事件が含まれていることを示している。

ダグラス・ラミスは、「アメリカでは戦争で人を殺せる人間でないと一人前の男になれない。極論ですが、そのために次から次へと戦場を探しているという説もある」、「どの世代にも自分が本当の男であると証明するチャンスを与えている」と述べている。

他の男に対して「自分は一人前の男だ」と証明しなくてはならないと思い込んでいる男たちがいる。軍隊ではその手段が、敵を殺すことだったり、時に強姦だったりする。自分を「男」だと証明するために戦争を起こしている、は極論としても、人を殺す技術を磨き、殺人や強姦が「男」であることの証明だと刷り込まれた人間(ベトナム、イラク等の帰還兵)を何百万人も抱え込むのがアメリカ社会である(ちなみに、ベトナム戦争以降、アメリカでは殺人、強姦、強盗が増え、ラミスは「戦争の暴力が国内に帰ってくる」と表現している)。アメリカの約4240分の1の面積しかない沖縄にも約2万5000人の軍人・軍属がひしめいている。米兵性犯罪が多発し、米軍が性犯罪者を守ろうとするのは、軍隊にミソジニーが浸透していることが理由の一つだろう。

強姦までいかなくても、女性蔑視、セクシュアルハラスメントを繰り返す男性は、ミソジニーの傾向が強く、「男」であることを証明する必要性を強く感じている者と想定することができよう。2014年、東京都議会で女性議員に対して「早く結婚しろ」「産めないのか」というヤジが飛んだ。ヤジを飛ばした自民党の都議は、謝罪はしたが辞職はせず、他の議員も、なにが問題なのかあまり理解していないようであった。日本の政権政党の女性嫌悪ぶりをよく示している事例だが、これに類する言動は、身の回りの職場や地域社会で日常茶飯事ではないだろうか。

日本最大の右派運動体といわれる日本会議は、日本の侵略戦争を「聖戦」と美化し(歴史修正主義)、外国人参政権に反対し(排外主義)、憲法改正を目指していることが指摘されているが、ジェンダーフリーバッシングの急先鋒であることも知られている。歴史教科書からの「慰安婦」記述削除を主張し、「慰安婦」報道を攻撃し、選択的夫婦別姓制度の導入に反対し、男女共同参画にも反対している(『日本会議と神社本庁』)。その価値観は、女性や外国人を見下す、独善的で傲慢な「男性中心主義」であり、こうした価値観が蔓延している今の日本社会を、本稿では「男・大人社会」と呼ぼう。日本会議に所属する国会議員は280名にのぼる。単に集票のために所属している議員が含まれるだろうが、それにしても無視できない数字である。このような議員を支持する有権者が多数存在しているのだ。

前泊博盛は、日本社会は性犯罪に甘いと主張する。性犯罪被害者に対するメディアの無神経な取材攻勢、「誘いに乗った女性が悪い」といった被害者バッシングの嵐(『もっと知りたい!本当の沖縄』)。今回の事件でも、インターネット上では、被害者に対して絶句するような誹謗中傷が浴びせられている。

こうした日本社会では、性犯罪への抗議の声が広がりにくい。米兵に限らず、あらゆる性犯罪が軽く扱われている。その土壌の上に、地位協定、密約で守られた米兵たちの性犯罪が引き起こされている。玉城福子は、性暴力に関する「加害者には甘く、被害者の落ち度を責める世間の声」を批判する。性暴力に抗議してきた女性たちは「軍人の時にだけ騒いできたのではない」、「生活の中にある性差別におかしいと声をあげてきた人たちである」。「『軍人の時だけ』騒ぐ方がおかしいのではない。おかしいのは、『軍人の時だけ』特別扱いをしている地位協定の方ではないか」(「死者のそばで私たちは何を語るのか」、『月刊琉球』2016年7月号)。

なお、岡野八代は、ジェンダーフリーバッシングについて、単に日本社会の「女性問題」に対する後進性に起因するものではないと述べている。男女共同参画社会基本法の本質は、「一人ひとりの尊厳が守られる社会へ向かおうとしてきた立憲民主主義社会の理念の実現」であり、「(ジェンダーフリーバッシングのような-筆者注)自然を騙り、〈女/男らしさ〉を強要しようとする政治は、わたしたちの尊厳を奪うことに他ならない」。

筆者は、2016年4月22日、アジア記者クラブ定例会で、フィッシャーさんの講演を拝聴し、前述の「自分も加害者の側にいる」との感想をもった。米軍基地問題解決に全力で取り組まず、ミソジニーに染まった「男・大人社会」を変えようとしてこなかったことを恥じた。今回の事件に対しても、同様の「結果責任」を感じている。

おわりに

米兵犯罪を防ぐには、まず、日米地位協定を改定し、公務外の米兵らの犯罪については日本側が裁判権を行使することを「忠実に」守るようにし、容疑者の身柄を日本の捜査機関が確保できるようにすることが必要だ。また、「公務」の範囲を厳格に限定すべきである。(今は米軍のさじ加減。プライベートな飲酒運転さえ「公務」とされ、裁判権が米軍のものとなることが多々ある)。米兵らをなるべく起訴しない、できるだけ米兵容疑者の身柄は米軍に引き渡すといった密約も破棄すべきだ。地位協定、思いやり予算による様々な「米軍特権」を廃止し、日本政府が米軍をもてなすことをやめさせよう。

そして、米軍基地被害をもっとも集中的に受けている沖縄から、基地の「県外移設」を進めよう。これは決して突飛な話ではない。

1995年、茨城大学教職員組合は、「沖縄県のみへの基地の集中を放置するのではなく、日本全都道府県に均等に米軍基地がおかれることもありうべきと考えています」というメッセージを発していた。組合執行委員長だった雨宮昭一は、本土の方で基地を引き受けた上で「望むなら反基地運動を展開して、安保反対そして安保破棄を求めるほうが良い」と記している(『戦後の越え方』)。

しかし、この提案はほとんどの日本人に共有されなかった。本土側から沖縄への米軍基地集中を解消するという選択肢が示されていたのに、多くの本土在住者は無視したのである。沖縄から「県外移設」を訴えるとイヤな顔をする本土の人間がいるが、そのイヤな気持ちを沖縄住民が何十年も味わっていることを想像できないのだろうか。本土でも基地を自分の問題として実感するために、沖縄から本土に基地を移設し、その上で「安保反対、安保破棄を求める方が良い」。

また、私たちは「男・大人社会」を変えなくてはならない。それは、米兵によるものだけでなく、あらゆる性犯罪に抗議の声をあげ、防止策を講じ、性犯罪被害者を支援できる社会、ひいては、一人ひとりの尊厳が守られる社会の実現につながる。

フィッシャーさんは、海外では当たり前に設置されている24時間体制のレイプ被害者支援センターを日本に設立する活動をしている。時には、沖縄に飛んで行って集会でのスピーチなどを行っている。辺野古埋め立て反対の集会にも頻繁に参加している。今回の事件後、メディアからの取材も殺到。講演やスピーチや取材はほとんどの場合ボランティアであり、交通費さえ自腹の時も少なくない。レイプによるPTSDの治療費や裁判費用で経済的には苦しく、電気を止められたこともあるのにだ。全身全霊、米兵犯罪防止、性犯罪被害者支援に打ち込んでいる。

沖縄県議会、地方議会は何十年も米兵犯罪、事故があるたびに、日米当局に抗議してきた。辺野古、高江をはじめ基地反対運動も続けられている。私たち本土在住者が、フィッシャーさんや沖縄の行動から学び、基地被害を無くすためにできることはたくさんある。それは、加害者であることから解放されることとなり、もっと住みやすい社会を作ることに参加することになる。

参考文献

・キャサリン・ジェーン・フィッシャー『涙のあとは乾く』、講談社、2015年

・ジェーン『自由の扉』、御茶の水書房、2009年

・布施裕仁『日米密約 裁かれない米兵犯罪』、岩波書店、2010年

・吉田敏浩『沖縄 日本で最も戦場に近い場所』、毎日新聞社、20102年

・吉田敏浩『密約 日米地位協定と米兵犯罪』、毎日新聞社、2010年

・新原昭治『日米「密約」外交と人民のたたかい』、新日本出版社、2011年

・琉球新報社編『外交機密文書 日米地位協定の考え方』、高文研、2004年

・アレン・ネルソン『戦場で心が壊れて』、新日本出版社、2006年

・上野千鶴子『女ぎらい-ニッポンのミソジニー-』、晶文社、2010年

・前泊博盛編著『本当は憲法よりも大切な「日米地位協定入門」』、創元社、2013年

・前泊博盛『もっと知りたい!本当の沖縄』、岩波書店、2008年

・ガバン・マコーマック+乗松聡子『沖縄の〈怒〉』、法律文化社、2013年

・雨宮昭一『戦後の越え方』、日本経済評論社、2013年

・『週刊金曜日』成澤宗男編著『日本会議と神社本庁』、金曜日、2016年

・俵義文『日本会議の全貌』、花伝社、2016年

・岡野八代『戦争に抗する ケアの倫理と平和の構想』、岩波書店、2015年

みやひら・しんや

1967年、沖縄県生まれ。東京都立大学社会科学研究科博士課程(基礎法学)満期退学。現在、流通経済大学法学部教授。専門は日本近代法史(入会権、水利権、温泉権等)。著書に、『リーガルスタディ法学入門』(共著、酒井書店)、『部落有林野の形成と水利』(共著、御茶の水書房)、『現代日本のガバナンス』(共著、流通経済大学出版会)など。

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