迷走する大阪都構想
奈良女子大学名誉教授
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最新号・目次

論 壇

迷走する大阪都構想

深手を負う地域のつながり

奈良女子大学名誉教授 澤井 勝


はなれた「民意」

中核市にもとうてい及ばない特別区

巨大な一部事務組合という怪物

市政改革プランは弱い者いじめ

西成区の「子供の里」と「山王こどもセンター」

地域活動協議会の問題点

「地域福祉計画」の推進はストップ状態

おわりに


はなれた「民意」

大阪都構想への信認を求めるとして、突然辞任しワンイッシューで再度立候補した橋本徹大阪市長。3月24日の投開票の結果、投票率は23.59%と大阪市長選では過去最低だった1995年の28.45%を4.86%も下回った。得票数は37万7472票で、前回の75万813票から文字通り半減した。有権者数に対する絶対得票率は、36.67%から17.85%に半分以下に縮んでしまった。

そして記録的な棄権や無効票の山。次点は「白票」で4万5098票。「他事記載」などの無効票は2万2408票で、合計6万7606票。これは投票総数の13.53%になる。これもこれまで最多だった2007年の長崎市長選の7.69%より5.84ポイント上回る。

この白票と無効票は、今回の選挙に対する市民の一つの積極的で誠実な対応だったように思える。棄権のなかにも多くの市民の誠実な姿勢を見ることができる。たとえば、3月26日の朝日新聞の声欄(大阪版)ではそのいくつかが紹介されている。

50歳の主婦は、「『無意味な選挙するな』。出直し選挙で、こんな無効票を投じた。率直な思いを伝えたかったのだ。投票に先立ち『大阪都構想』を学ぼうと、橋下徹氏の個人演説会にも参加した。そこで大阪市の無駄の多さを知り、『市役所をぶっつぶす』と橋下氏が訴える理由が理解できた。しかし同時に、疑問も感じた。市民からは地域の公共施設の統廃合について様々な質問が出たが、橋下氏の返答はこんなフレーズが多かった。『それは都構想が実現して特別区ができた後、みなさんが決めればいいんです』。住民主導のようで聞こえはいいが、丸投げのような印象も受けた。大阪都になってから後悔しても取り返しがつかない。もっと具体的に住民目線でメリットデメリッとを示してほしかった。『住民投票』を目指すと言うが、ごり押しからは中途半端な結果しか生まれない。市民とともに、地に足がついた議論を深めていただきたい。」

このように、橋下市長を応援してきた市民の中からも、大阪都構想を実現するためにも、住民目線からの具体像を示せという意見が強い。それに応えきれない橋下市長の暴走には不信感が強くなっている。今回の出直し市長選は、「市民の利益ではなく『維新』のために行われたように見えた」という声もある(同じく「声」欄から)。

橋下市長自身が言っていた「ふわっとした民意」は大きく離れつつあるともいえる。橋下市長の出直し選挙という賭けは裏目に出たというのが正直なところだろう。次の手は、『公約』とも言ってきた法定協議会の議員を、都構想推進議員に差し替えるという手だが、これも選挙前とは違って、この差し替えに「民意を得た」とは言えない。橋下支持者で都構想支持者の中にも、先の「声」欄の女性のように、丁寧な議論と多くの賛同を得られる説明を求める声は少なくない。ここで議員差し替えを強行すれば、ますます「民意」は冷淡になると見るほうが自然である。空席ばかり目立つ会場での「一人相撲」の度が深くなる一方だ。

この法定協議会で多数派を無理につくっても、次の市議会、府議会の多数派形成は、より難しくなることは目に見えている。相手をたたいて沈黙させる橋下流の威嚇、恫喝戦術は、同盟者であった公明党をより遠ざけることになっている。議会多数派を形成できなければ、すべての都構想周辺の議論はストップするか、別のものに変わっていく。都構想そのものではないが、大阪市営交通の民営化、水道事業の民営化、家庭系ごみ収集輸送事業の民営化などがその例である。大阪市廃止、新大阪府設置と特別区設置という都構想自体の議決も現在の政治状況では不可能であり、この状況は時間が経つにつれて改善する見込みはない。むしろ袋小路に追い込まれていくだけだろう。

中核市にもとうてい及ばない特別区

都構想自体は、法定協議会での議論が進行するにつれ、その問題点も明らかになりつつある。2014年3月14日に発刊された、『大阪市廃止・特別区設置の制度設計案を批判する』(大阪の自治を考える会編著、公人の友社)を参照して見てみよう。

基本は政令指定都市である大阪市を解体して、新大阪府と「中核市並み」の特別区に分ける。その際、まず新大阪府に移される大阪市の事務に対する批判がある。

2013年8月9日に開催された「第6回 大阪府・大阪市特別区設置協議会」で提案された『大阪における大都市制度設計資料(パッケージ案)』によると、まず政令指定都市である大阪市の事務・権限のうち253の事務・権限が新大阪府に移されることになる。

(なおこのパッケージ案では、特別区を7区にする案と5区にする案が示されて、それをさらに相対的に税収が良い中央区と北区を分離する案とが示されていた。橋下市長はこのうち北区と中央区を分離した5区案にしぼりたいらしい)。

移される事務の主なものは、あいりん対策、精神保健福祉センター、高等学校、特別支援学校、大学、成長分野の企業支援等、中央卸売市場、広域的な交通基盤の整備、成長戦略・グランドデザイン、港湾、雇用対策、都市計画、道路(広域交通網)、公園(広域防災拠点)、下水道、消防など。それにともない、固定資産税と法人市民税、そして特別土地保有税の3税は府税となり、府と特別区間の財政調整のための財源となる。その賦課徴収事務も、またその財源もまずは新大阪府のものとなる。新たな特別区は、これらの税を奪われる。既にここから「中核市並み」は崩れている。

特別区に移譲される事務は、175事務。児童相談所・児童福祉施設、身体障害者更生相談所、知的障碍者更生相談所、精神障害者保健福祉手帳の交付等、小中学校教職員人事権・研修、旅券交付、大阪市内の府営住宅管理、など。

これについて『批判する』は、まず、大阪の特別区が「中核市並みの基礎自治体」という位置づけにもかかわらず、一般市にも及ばない中途半端な「特別区」に限定されるという。特に消防、都市計画(広域)、道路(広域)、下水道、雇用対策、精神保健福祉センターなどがなくなるので、この特別区は一般市である中核市にはとうてい及ばない小規模な権限に限定される。このような新しい特別区は、あくまで新たな広域自治体である新大阪府の内部団体にとどまる。自立した基礎自治体になりえていない東京23区よりさらに低位置に押しとどめられることになる。

この特別区の人口は、橋下市長が絞り込みたかった5区案(北区と中央区を分離)では、A区が56万1千人、B区が51万2千人、C区が58万3千人、D区が59万2千人、E区が41万5千人となっている(2011年4月1日現在)。中核市としては、金沢市(46万人)、豊中市(39万人)、姫路市(53万人)、東大阪市(51万人)、西宮市(48万人)、などに匹敵する規模だが、想定されるように都市計画事業や消防事業、下水道事業などは大きく制約されるか、持つことはできない。中途半端な事務と権限に制限されることは明らかである。

巨大な一部事務組合という怪物

それに、特別区の仕事とされた事務のうちかなりの事務が、実際は特別区等がつくる『一部事務組合』が行うとされている。たとえば各特別区が承継する普通財産の大部分は一部事務組合で管理するとされている。そのほか、国民健康保険、介護保険、住民情報系システムに加えてその他の140システムの共同管理・処理、児童福祉説等の福祉施設、中央図書館、中央体育館、救急診療所、斎場や霊園などの設置と管理が一部事務組合にゆだねられ、特別区住民の関与は遠くなる。

一部事務組合は、複数の自治体が一定の事務について、共同で管理し処理するために設置するもので、特別地方公共団体の一つ。議会を持つが、その議員は構成自治体の議会の議員から選出される。地方自治体の長に当たるのは「管理者」であるが、選任の方法は、「構成団体の長の互選による」とするか、「○○の長をもって宛てる」とする。すなわち、特別区の住民はごく間接的にしか関われない。組合議会の条例についての制定・改廃の住民による直接請求や議員の解職、管理者の解職などの直接請求は認められていない。

その点は「広域連合」とは違う。広域連合は、長の選任について、構成団体の長の互選のほか、構成団体の住民による直接公選も認めているので、その裏返しで直接請求も認めている。ただし、広域連合制度ができて20年近くになるが、公選の長は一人も生まれていない。

この法定協議会に提案された事務配分のパッケージ案における一部事務組合は、複合事務組合のようだが、きわめて巨大だ。脈絡がない多種多様な事務を管理し処理するもので、いわば「バーチャルな大阪市の復元」ともいえる。これでは、これらの多様な事務を一部事務組合に預ける特別区は、基礎自治体とは言えないような貧しいものになる。市民からすると、強大な権限を持つ新大阪府と貧相な特別区の間に、何を考えているかわからないかなり大きな第三の存在が生まれる。選挙がないので顔も見えないし、市民参加のルートがないので意思疎通ができない不思議な組織だ。

東京都の場合、特別区の一部事務組合(うち一つは協議会)は5つしかないし、それぞれが独立した事務組合であるので、まだわかりやすい。すなわち、特別区競馬組合、特別区人事・厚生事務組合、東京23区清掃一部事務組合、東京23区清掃協議会、臨海部広域斎場組合、の5つである。

市政改革プランは弱い者いじめ

もう一つ大きな問題は、都構想問題と並行して進められてきた「市政改革プラン」(2012年7月策定)による市政改革だ。民間が管理、運営できている分野は民間に、という主張で公立保育園や公立幼稚園の廃止と民営移管が典型だが、これも市民の強い抵抗にあっている。また問題なのは放課後児童対策として大阪市独自の事業として定着してきた「子供の家」事業を廃止して学童保育に移行する問題に表れている「公平感」である。そして、この2年間で補助金の強行的な整理の中で組織されてきた「地域活動協議会」は、従来の地域住民自治組織である振興町会(町内会自治会)とその連合会などを相当痛めつけているように思われる。あるいは文化行政の切り捨てと補助金カットの対象となった大阪市音楽団や文楽の窮状がある。

この補助金カットの対象となった市社会福祉協議会の解体が地域福祉に大きな影を作っている。14年2月段階で、市社会福祉協議会の職員の3分の一が退職したと言われている。この退職は専門職が多いと予想される。専門職は人手不足が続いているから、他に移ることが容易なのだ。社会福祉協議会の活動に将来性を見いだせない状況になっていることが大きく影響していると思われる。

西成区の「子供の里」と「山王こどもセンター」

大阪市の子供の放課後事業には3種類ある。(1)留守家族の小学校低学年の子供たちを夕方7時まであずかる「学童保育」(月2万円、109か所)、(2)空き教室で午後6時まで小学生を預かる「児童いきいき放課後事業」(298か所)、(3)「子供の家事業」(利用料無料、実費負担、28カ所)である。「大阪市政改革プラン」は(3)の「子供の家事業」を(1)の「学童保育」に統合するとしている。「子供の家」を利用している生活保護世帯の子供は、有料化で行き場を失う。小学校低学年生以外の幼児や小中学生、高校生も、これまでの居場所であり、気楽に立ち寄れる場所、息を抜く場所から追い出される。

「子供の家」事業は、(1)のように小学校低学年に限定せず、0歳から18歳まで、どの年齢層も受け入れる。そして利用料は無料である。(2)のように学校の延長でもない。障害を持った子供たちも多く、利用時間は365日、24時間可能なところもある。

特に特色があるのは西成区の「子供の里」と「山王こどもセンター」だ。(以下、さいたまユースサポートの青砥恭さんのウェブページなどから要約する。)西成区の「こどもの里」事業は、1977年フランシスコ会「ふるさとの家」の2階に、幼児から児童、小中高校生の誰が来てもいい遊び場として始まった。この場所は、青年たちや保護者にもほっとする場、学習の場、相談の場、生活の場、ともに助け合う場として機能してきた。1996年に大阪市が全児童の健全育成を目的とする事業として「子供の家事業」として発案、実施したもの。利用料は無料、指導員は2名以上を実施主体で確保することとした。補助金は学童保育の2倍を確保した。

「山王子どもセンター」は、同じ西成区釜ヶ崎の隣接地に1916年に作られた飛田遊郭(飛田新地料理組合)の地域内にある。子どもセンターの子供の5割はひとり親世帯の子だ。施設長の前島麻美さんは大学を出て30年、ここで300人を超える子供とその親たちと関わってきたという。

父子家庭で小学校2年生から自分で食事を作ってきた子がいる。その後、窃盗などで自立支援施設に入ったが、身元引受人は前島さんだ。「家ではできないこと、たとえばセンターはみんなで食卓をかこんで食事ができる」。それが大事だという。

このような子供の無料の居場所は、学童保育では確保できない。ハンディキャップのある若者を支え、話を聞き、受け止めるのは、コスト面からも公共的に支える必要がある。それが本当の意味での公共の役割りというものだ。それは次のような橋下流(それを支える上山信一慶応大学教授などイデオローグ)の説明とは違う。

「『子供の家事業』と『留守家族児童対策事業』は、ほとんど仕組みは一緒なのに、『子供の家事業』の利用は無料、一方の『留守家庭対策事業』の利用は有料で、同じように行政の援助を受けながら、結果としての保護者負担に大きな違いがあることは、公平でなく、やはり補助金制度のあり方として問題だと思います」。

ここに言う「公平」は「エセ公平」である。ハンディキャップのある人に必要とされるバリアフリー施策やアファーマティブ・アクションなど「合理的配慮」(障害者権利条約が実現するよう社会に求める原理の一つ)を否定するものだ。このような「エセ公平」の強制は、所得が低い人々の生きる権利を奪う。前島さんが橋下市長は「弱い者いじめだ」というのは、その意味でも当を得ている。

地域活動協議会の問題点

大阪市の地域活動協議会は、2012年度からおおよそ小学校区を単位として、全市で設置を進めてきた。三浦哲司同志社大学助手(現名古屋市大助教、大阪市政調査会『市政研究』182号、『大阪市における地域活動推進協議会の設立とその課題』)によると、2013年11月末時点で、合計317の地域活動協議会が設立されている。大阪市内24区のうち19区で全地域設立が終わっている。残り5区もほぼ設置が完了している。

この地域活動推進協議会は、すでに橋下市長の前の平松邦夫前市長時代に構想されたものだ。「校区等地域を単位として、地域住民の組織をはじめ、ボランティア団体、NPO、企業など様々な市民活動団体が幅広く参画し、民主的で開かれた組織運営と会計の透明性を確保しながら、防犯・防災、子ども・青少年、福祉、健康、環境、文化・スポーツなどの様々な分野において、地域課題に対応するとともに地域のまちづくりを推進することを目的として形成された連合組織」とされている。

これが新しい大阪的な住民自治の基盤になれるかどうか。市民グループ「見張り番」や「24区市民連絡会」には、従来の地域振興町会に対しては、市からの手厚い個別補助金頼みで、不透明・不公平な運営を続けてきたという不信感と批判が強いようだ。これが是正されるという期待があったようだ。しかしこれは裏切られた。ほとんどの「地域活動協議会」が2013年2月から3月の短期間に設立されている。なぜそんなに短期間に設立が進んだのか。それは行政当局が2012年11月に突如、各地域で従来の個別補助金をまとめた一括補助金の受け皿として、地域活動協議会を設立しなければ2013年度からは市の補助金を受けられないとしたからである。2012年10月に各区に置かれた中間支援組織である「まちづくりセンター支部」(まちづくりのスーパーバイザー<委託>で、ある区ではアドバイザー1名、まちづくり支援員3名の体制)と区の職員の強い関与の下、十分な議論がない中で設置された地域活動協議会が多い。

『見張り番』のブログによると、「3月6日、第2回も市役所から委託された中間支援センターのメンバーや区役所の職員によって、第1回に案内状が送られた地域社協のメンバーと町会長らが集まった。会合の案内は「規約の検討」だったようだ。主催者の説明では、前回は学習会と設立準備を兼ねた会合であったという。なぜかこの地域は勉強会も説明会もはしょって、申請書類提出に間に合わない、間に合わないと補助金が出ない、と補助金を得ることが設立の目的のようだ。」

この校区の場合、市からの各種補助金を一括して400万。校区ごとに市の補助金は200万円から500万円といったところか。これはかなり大きな金額で、確かに既得権益化の可能性がある。

それにしても、住民自治組織の形成の仕方としては、乱暴に過ぎる。カネはカットできるだろうが、住民からの市などへの不信感、住民同士の不信感が強く残る可能性がある。これは将来の住民自治の基盤に大きなひびを入れることになる恐れがある。

「地域福祉計画」の推進はストップ状態

この各区の「まちづくりセンター支部」は、そのフェイスブックを見ると現在もかなり活発に動いているところもあるようだが、一方で、旧来の住民組織や各区の社会福祉協議会は弱体化しているようだ。その結果の一つの例としては、「地域福祉計画」の改定や推進がほぼ停止しつつある。

「地域福祉計画」は、社会福祉法(2000年4月施行)に定められた計画で、住民を地域福祉の主体として初めて規定したもの。市区町村が主体で、策定は努力義務であるが、人口20万以上の都市はほぼ策定しており、3年から5年ごとに改定している。

大阪市の場合は、第一期計画が2004年度から2008年度の5か年、第二期計画が2009年度から2011年度までの3年間で策定され、2011年には第3期計画を策定中であった。ところが、2011年11月の府知事と大阪市長のダブル選で橋下市長が生まれると、当局は原案までできていた第3期計画策定作業をストップさせたのである。この「第3期大阪市地域福祉計画」はしばらく宙づりになっていたが、昨年(2013年)11月になってようやく「大阪市地域福祉推進指針」が示された。これは、「地域福祉計画」の策定主体を「区」とし、その策定のための「指針」という位置づけである。

大阪市の地域福祉計画の特色は、24の行政区ごとに2006年半ばに「地域福祉アクションプラン」を策定し、推進していたことにあった。こういったアクションプラン策定とその実績があることを考えれば区を地域福祉計画の実施主体とすることはあながち的外れではない。特に西成区のアクションプランは生活保護受給者の地域でのケアを組み込んだすぐれものである。アクションプラン策定委員会に生活保護部会を設け、生活保護受給者の地域清掃活動への参加を推進している。この取り組みは、従来の地域福祉論から排除されていた生活保護受給者を地域福祉の推進体制の中に位置付けたもので、現在の「生活困窮者自立支援制度」の考え方につながるといってもよい。現状では、西成区は他の区に先駆けて、2013年5月に「第3期西成区地域福祉アクションプラン」を策定し、事業を展開している。

しかし、市全体からすると、第3期地域福祉計画策定の中止は、おおきなダメージであったようだ。各区のアクションプランのホームページを検索したところ、現在もウェブページの更新と発信を続けている区は、西成区、北区、天王寺区、西淀川区、淀川区、鶴見区、港区の7区ではないかと思われる。他の区はリンク切れだったり更新が2年以上止まっている状況で、アクションプランとしては活動が見えなくなっている。

さらに、地域福祉計画のパートナーである社会福祉協議会は極めて弱体化しているようだ。大阪市社協も第3期地域福祉活動計画の策定を中止し、それに代えて3013年3月に「地域福祉活動を進めるための大切な視点」を作成するにとどまっている。そして「地域福祉アクションプラン」では各区社会福祉協議会が基本のパートナーだが、かなりの区社協で、アクションプランとの連携が切れているような印象である。

おわりに

大阪市を巡っては、来年、2015年4月の統一地方選に向かって、住民投票が行われるか否かが一つの争点である。住民投票が実現しないときは、その統一地方選で、維新が市議会、府議会の過半数をとれるかが次の争点になる。いずれにしてもこの先も「都構想」の制度設計の問題点を明確にする作業は続けなければならない。

それに、3月18日に国会に提出された「地方自治法改正案」には、「政令指定都市制度の改革」が入っている。これは地方制度調査会の答申(2013年6月25日)「大都市都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービスの提供体制に関する答申」を受けたものだ。中心は政令指定都市の行政区の改革で、行政区の分掌事務を条例で定め、総合区の設置を可能とする。総合区長の議会の同意を得た選任、など都市内分権をすすめる。中核市の要件を20万に引き下げて特例市は中核市に統合する。新たな広域連携のため広域連携協約制度を創る。小規模自治体向けには「事務の代替執行制度」を設ける。

「都構想」自体は、膨大なエネルギーを浪費しながら、燃え尽きていくことも考えられる。後には、地域や団体に深い傷跡を残しながら。大阪府市統合本部の大阪市からの出向職員と大阪府職員は一緒に夕食をとることはないという。西成区の地域福祉アクションプラン推進委員会での乾委員長(西成区社会福祉協議会会長)は、2012年7月の第20回委員会の冒頭のあいさつで、次のように述べている。「現在大阪市政の改革が進められており、地域の活動やコミュニティづくりの基盤となる様々な団体の運営が困難な状況になりつつあり、区自身も数年先にはどうなるかという課題もあるが、地域がなくなるわけではなく、今後も私たちが地域のコミュニティづくりを進めていくことに何ら変わりはない。」

われわれもまた、地域のつながりをゆっくりとふかめ、広げていくことを大事にしたいと思う。率直な議論を基礎にしたまちづくりが進められるよう期待しながら、大阪を見守っていきたい。


さわい・まさる

1942年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。地方自治総合研究所、北九州大学教授を経て、1997年奈良女子大学教授。現在同名誉教授。大阪市政調査会会長。著書えmnに『現代の地方財政』(有斐閣)、『自治体雇用・就労政策の新展開(公人社)、『自治体改革第二ステージ、合併新市計画の作り方』(ぎょうせい)など。