現代の理論アーカイブ

現代の理論アーカイブについて

編集部

『現代の理論』アーカイブでは、第一次から第三次にいたる雑誌『現代の理論』に掲載された論文のうち、再読すべき主要論文を編集委員会が厳選して紹介いたします。また読者のみなさんのご要望にもお応えします。『現代の理論』は、発信媒体の多様化によって目先の時局論・政局に流されることのない骨太で息の長い理論や政策の発信を目指してきました。常に現実や実践への思考を内包し、理論の自立性を掲げての50年―それが雑誌『現代の理論』の歴史でした。そのような先達の営為をあらためて回顧することによって、「今だからこそ」問われなければならない現代的課題の再発見が可能となることを確信しています。

今号の特集は、「混迷する世界への視座」です。イギリスのEU離脱決定など「内向き」の政治・社会が広がっている中で、特にトランプアメリカ大統領の登場を契機に、世界がどこへ向かうのか不透明になり、「危機」が進んでいることを明らかにしようとしました。多くの論文がトランプ登場を論じていることから、その課題の大きさ・多さがよくわかります。

しかし、冷静に考えると、世界が突如として変わってしまうということはあり得ません。むしろ変わらずに続いてきたことがEU離脱決定やトランプ大統領の登場を準備した側面が大きいとも言えるはずです。そのように「世界の全体像」を歴史的にもつかまえていくことが重要だろうと考えます。

その視点から、第三次『現代の理論』第27号(2011年春号)に掲載された、金子敦郎さんと橘川俊忠さんの対談「いま、アメリカをどう見るか」と、同じく27号に掲載された、海野素央さんの論文「オバマ草の根 VS ティーパーティー」を取り上げました。

前者の対談では、アメリカでは「建国の父祖たち」という言葉がマスコミで多用され、アメリカは例外的なエリートだという意識が強いと指摘していました。その上でアメリカ社会を見ると、奴隷制度に淵源するであろう差別構造が生きていて、その上に「いびつな民主主義」がつくられていると語られています。トランプ現象の背景が述べられていると言えないでしょうか。

後者の海野論文は、2012年の大統領選挙を展望しながら、草の根の運動のレベルでもアメリカ社会の「分裂」が見え、それがアメリカの経済に原因をもつと指摘していました。

なお、半年前の第9号のアーカイブで紹介した、第三次『現代の理論』15号(2008年春号)の水野和夫さん「サブプライム危機がグローバル経済の本質的危機を露呈させるか」 (http://www.gendainoriron.jp/vol.09/riron/vol15_mizuno.pdf) は、世界の資本主義のパラダイム転換を論じながら、同時に先進国における「民主主義の危機」が起こると論じていました。「先進国における中産階級没落の危機」を取り上げて、「サブプライム危機は、資本と国家が一体化した資本主義にとって最大の危機である。その資本主義システムを政治面から支える主権国家の中核をなす中産階級がサブプライム危機で最大の被害者となる可能性が高いからである」と、現在を見通していたのです。要するに、冷静に考えれば、世界の変動は視界に入っていたということでしょう。

このように、一貫して流れるうねりの中から今の世界・社会が生じているということを、かつても言っていたのですが、それを言う私たち自身も、少し面前の出来事ばかりに気をとられているのではないかと、反省すべきでしょう。これまで『現代の理論』が訴えて明らかにしようとしたことを検証しつつ、本誌の内容をますます充実させねばならないと、心から思います。

論文アーカイブ

第三次『現代の理論』第27号(2011年春)/特集「帝国アメリカの黄昏」

「対談『いま、アメリカをどう見るか』」国際問題ジャーナリスト・金子 敦郎 本誌編集委員長(現・神奈川大学名誉教授)・橘川 俊忠

第三次『現代の理論』第27号(2011年春)/特集「帝国アメリカの黄昏」

「オバマ草の根 VS ティーパーティー」明治大学教授・海野 素央

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