特集●コロナ下 露呈する菅の強権政治

バイデン大接戦制し、米民主主義の危機救う

トランプ、支持勢力は維持―「不正選挙」と政権引き渡し拒否

国際問題ジャーナリスト 金子 敦郎

米大統領選挙は民主党バイデン候補が接戦を制し、トランプ大統領の再選阻止に成功した。しかし民主党はトランプ氏の固い支持基盤を切り崩すことはできず、上院の多数奪還は来年1月の再選挙に持ち越し、下院も多数は確保したもの議席を減らした。トランプ氏は選挙に「不正」があったと裁判闘争に訴え、バイデン次期大統領への政権引き継ぎへも拒否の構えだ。この強硬姿勢の背後には敗れたとはいえ半数に迫る7000万超の票を獲得したという驕りがあるのだろう。

共和党首脳部はトランプ支持を表明しているが、同党内部からも含めて民主主義の土台にある選挙の信頼性を損なうと強い批判が向けられている。常識では選挙結果が覆ることはありえない。だが、トランプ氏には常識は通用しないかもしれない。「大統領権力」を握りしめて徹底抗戦に出るとすれば、前例のない落選大統領によるクーデタ―の試みである。

バイデン新政権は国家をほぼ二分するトランプ勢力と向き合いながら米民主主義の修復を進めるという難題に挑戦することになる。

トランプ支持票も伸びた

異常な才能を持つ1人の人物が民主主義のルールを破り捨て、その規範をゴミ箱に放り込むんだ(T.フリードマン、ニューヨークタイム紙コラムニスト)ことによって、民主主義国の盟主ともいわれた米国の民主主義は漂流状態に突き落とされてしまった。ニューヨーク・タイムズ紙は米民主主義が「断崖の渕」に立たされている中での選挙と表現した。

こうした危機感が有権者の意識を高めて、投票率は66%超と記録的な高率になるとみられる。民主党はその選挙で大統領を奪還したうえで長年の地盤、中西部で4年前に失った3 州を取り戻し、共和党根拠地の南部と西部の一角に切り込んで1州を奪い、2州を僅差に追い詰めている。選挙戦としてはひとまず危機を回避し、成功だったといえる。

しかし、両候補が獲得した得票数を詳しく見ると、勝ったと喜んでいるわけにはいかない。得票数ではバイデン7,790万、トランプ7,260万と530万票差、比率では50.8%対47.4%と3.4ポイント差。前回選挙ではクリントン6584万票の48.1%、トランプ6298万票の46%と2.1ポイント差だったから、差は1.3ポイント開いた。しかし、敗れたとはいえ総人口3億6660万人の米国で概数7,260万もの支持を得たことは、トランプ支持の堅固さを示している(11月12日現在)。

トランプ大統領は就任以来、権威あるとされる多くの世論調査の支持率は終始40%前後にとどまり、過半数を超えたことはない。大統領選挙戦でも常にバイデン氏にリードを許してきた。トランプ氏は2016選挙でもクリントン民主党候補にリードを許しながら最後に大逆転を果たした。この苦い経験から各世論調査は精度を高める努力をしたとされる。

バイデン勝利の予想は動かなかったが、激戦州は「誤差の範囲」を超えた大接戦となった。世論調査は危うく、2016年の二の舞いになるころだった。トランプ氏には「隠れ支持者」がいるともいわれるが、専門家は裏付けるデータはないといっている。トランプ氏には特別な集票力があるのだろうか。

「白人国」への回帰?

数ある問題の中で特定の一つ、あるいは二つかを大きく取り上げて、思い切った強硬策を打ち出して注目を集める。反対は敵視して激しい言葉で攻撃を加え支持を煽り、ブームを起こす。いわゆるポピュリズムの政治手法で、選挙には結構、有効なのだ。欧州ではハンガリー、ポーランドでこの型の強権政権が生まれている。「マッチョ好み」(macho男らしさ)の国とはいえ、米国にこのタイプの大統領が登場するとは誰も予想できなかった。

政治経験のなかったトランプ氏が2016年大統領選挙に出馬、著名な共和党幹部たちをたちまち押しのけ、これも民主党を代表する本命候補穂クリントン氏も破って大統領になった。このとき以来、トランプ氏が掲げてきたのがスローガン「米国を再び偉大な国にする(MAGA)」、それを実現するための方法論が「米国第一」だった。

トランプ氏は「偉大な米国」がいつの時代のどの米国なのか直接示したことはない。だが、この4年間でそのイメージははっきりと浮かび上がった。「白人支配の国」である。トランプ氏は最初の政権人事で白人至上主義の指導者S・バノン氏を首席戦略官という要職に据えた。白人至上主義や極右の団体の活動が活発化して、紛争を引き起こし、不安も広がった。しかし、トランプ氏は記者の質問を受けても白人至上主義者や極右を非難することは拒み続けてきた。

白人警官の暴力的取り締まりで女性や未成年を含む黒人が命を奪われる事件が相次ぎ、差別に抗議する「黒人の命は大」(BLM)と呼ばれる抗議デモが全米に広がる。南北戦争の南部指導者の記念碑や顕彰像を取り壊し、スポーツその他のイベントで南軍旗を掲げることに反対するなどの運動が起こった。

トランプ氏は歴史と文化を破壊すると強硬に反対して、人種差別反対のデモがBLM旗を振るのも、南軍を支持する人が南軍旗を掲げるのも同じ言論・表現の自由だとインタビューで主張した。大統領選挙のテレビ討論でBLMデモに介入する白人至上主義や極右団体を非難しないのかと質問されたが直接には答えず、テレビ画面を通して彼らに「今は下がって(不正選挙監視の行動に)備えよ」と呼びかけた。トランプ氏のこうした一連の言動からトランプ氏が南北戦争で敗れても奴隷制度廃止に徹底的に抵抗したKKK( Ku Klux Klan )などの白人至上主義を信奉しているとみて間違いはないだろう。

トランプ氏が2016年選挙で掲げて就任早々から推進してきたのが「不法移民」の追放と新しい移民の厳しい制限だ。これも合わせればトランプ氏が復活を目指す、いつの時代かの「偉大な米国」が白人支配の国であることは自ずと浮かび上がってくる。

米国は建国時の白人国家から多数の移民を受け入れ、「人種のるつぼ」といわれた。しかし、白人移民は次第に頭打ちになり、第2大戦後の急速な経済発展に伴って非白人移民が増え、米国は多様性・多元文化の国「サラダボウル」への転換を果たしてきた。現在はなお70%を占める白人は2040年代半ばには半数を割る。「MAGA」はこの歴史の歩みを逆転させようとしている。トランプ氏とその支持者はそれが実現可能と考えているのだろうか。トランプ氏はそれによって政権を手にし、再選も果たせると考えていたのかもしれないが、その先どこまでこのスローガンを推し進めるつもりなのだろう。

「ラストベルト」の「身元証明」

2016年選挙でトランプ大統領に勝利をプレゼントしたのは、歴史的に民主党の州とされた中西部の工業地帯の有権者が多数トランプ支持に転向したからだ。米国経済発展を担った鉄鋼や自動車など花形産業はグーロバリゼーションの繁栄から取り残されて「ラスト(さび付いた)地帯」と化し、白人労働者の憤懣と怒り、政治・経済の支配層に対する不信が蓄積されていた。陰謀論好きトランプ氏はこうした不信に満ちた米国を実質的に支配している既成エリート支配層を「地下政府」(deep state )と呼び、敵視する。

トランプ氏は強権で工場の海外移転を止めさせたり、閉山した炭鉱を再開させたりと、「弱者の味方」を演じた。だが、それで米国が世界に広めてきたグローバリゼーションを止められるわけではない。今度の大統領選挙でもこの地域をバイデン氏が取り戻すか、トランプ氏が守り抜くかが勝敗を分け、大接戦にはなったがバイデン氏が全部取り戻した。

しかし、「ラストベルト」に代表される白人低学歴層の不満、怒り、不信の底辺にあるのは単なる経済問題ではない。オバマ政権の下でやっと実現した医療保険制度「オバマケア」は低所得層の加入者を徐々に増やしてきたが、「小さい政府」の呪縛から抜けられない共和党は執拗に「オバマケア潰し」の機会を狙っている。

トランプ支持層の低所得者も加入すれば恩恵を受けるはずだが、その動きは表には出てこない。「ラストベルト」問題の本質は経済問題ではなく「身元証明」(アイデンティティー)の問題だからだという(新進ジャーナリストE・クライン、歴史哲学者F・フクヤマら)。「ラストベルト」問題は「白人の国」と同じ人種差別問題につながっているのだ。

急速な科学技術、経済の発展によって、米国社会における彼らの役割は低下し、存在感が薄らいだ。移民の数は増え続けている。白人が多数を失う日が見えてきた。彼らは民主党の中核を占めていた労働組合を通して民主党の下にいた。もう民主党には頼れないと思ったところにトランプ氏が現れた。しかし、トランプ氏は「弱者の味方」なのか。選挙の結果からは何かが変わり始めたようにも見える。

ファクト・チェック1「史上最高の経済」

世論調査は大統領候補としての支持、不支持を問うとともに、その時々の状況に応じて、有権者が関心を持つとみられる政策について個別に賛否を聞いている。経済政策、新型コロナ感染対策、人種差別解消、治安対策、移民問題、気候温暖化などだ。これらの中でトランプ氏が一貫して常に強い支持、あるいは信頼を受けてきたのが経済政策だった。

米経済はトランプ政権のもとで(コロナ禍が広がるまでは)順調に推移して、失業率や新規雇用で好数字を残してきた。トランプ氏が不動産業で成功した実業家とされることも理由になっている。トランプ氏はことあるごとに、米大統領として米国に史上最高の経済繁栄をもたらしたという実績を繰り返してきた。

政治家の発言に誇張はつきものだろうが、「史上最高の経済」は全くのうそである。トランプ政権下の経済成長率は2%そこそこ。オバマ政権末期からの延長である。1950~60年代の高度成長期を除けば1990年代後半(民主党クリントン政権)の経済成長率は4.5~4.7%で、これが「史上最高」である。

ファクト・チェック2「法と秩序」

世論調査でトランプ氏がもうひとつ、バイデン氏より高いポイント得ているのが「法と秩序」。黒人の命は大切」(BLM)や市民団体の人種差別に対する抗議デモでは、黒人が白人警官の暴力的な取り締まりで殺される事件が相次いだことで世論の支持が高まった。だが、参加者の一部の暴走や意図的挑発によって略奪や放火事件に発展することがある。トランプ氏は暴動をデモに紛れている極左勢力が引き起こすとしながらも、BLM、民主党、バイデン氏をひとまとめにして社会主義者(米国では今も社会主義と共産主義を同じように考える人が多い)、極左勢力と非難して恐怖をあおり、「法と秩序」を強調した。

しかし、レイFBI(連邦捜査局)長官は議会で、デモに介入し暴力を挑発しているのは極右勢力や白人至上主義組織だと証言し、極左暴力組織の存在やBLMの暴力化を否定した。選挙が終わるとすぐ、BLMデモ鎮圧に実戦部隊出動を求められて拒否したエスパー国防長官が解任された。トランプ氏に都合の悪い事実を明らかにしたFBI高官が次ではないかとの観測がしきりだ。

フェイク、3年10カ月で22,247回 

ワシントン・ポスト紙の「ファクト・チェック」(トランプ氏の意図的うそと、事実ではないことを事実と思い込ませる発言を監視)によれば、トランプ大統領は就任以来2020年8月27日までの3年8カ月で22,247回、1日15~16回のフェイク発言(ツイートも含めて)をしている。このうちで最も多く繰り返されたのが「史上最高の経済繁栄」で、407回に上った。

トランプ支持者はこの大量の「フェイク情報」をそのまま信じている。トランプ氏は自分に都合の悪い新聞やテレビの報道はすべて「フェイク・ニュース」と切り捨ててきた。トランプ支持者たちはトランプ支持のはっきりしているFOXテレビニュースと少数のラジオ局のほかの一般の報道はほとんど見聞きしていないとみられている。

裁判闘争の狙い

選挙を実施するのは州の権限であり責任だ。トランプ氏が接戦となった激戦州のいくつかで行った訴訟の多くはこれまでのところ「証拠となる事実」がない、あるいは不十分と却下されている。共和党が支配的な州の選挙当局からも「不正」があったとの報告は出ていない。選挙結果は12月8日までに州議会から知事に報告され、各州議会は大統領選挙人を選出、14日選挙人投票が行われて大統領が選出される。日程は限られている。

トランプ氏はこの手続きの進行を阻もうとしている。これを許すと、1月3日新議会開会、5日には決選投票にもつれたジョージア州上院議員選挙(補選を含めた2議席を取らないと上院の多数を握ることはできないので苦しい)、6日連邦議会が大統領選挙の結果を確認、20日大統領就任、と日程が憲法で決まっている。これに間に合うように大統領選挙結果が決まらないとなれば非常事態で、下院が大統領を選ぶことになる。下院は民主党が多数を維持したが、この場合は議員数にかかわりなく、各州代表が1票を投じる。これだと共和党州が多数なのでトランプ再選が決まる。なんと批判されようと時間稼ぎをしてここに持ち込むというのがトランプの狙いだ。

この制度は米国が13の植民地が集まった「白人国」として独立した当時の憲法にある国家統治の枠組みだ。大統領は一般投票の獲得数ではなく、州を代表する大統領選挙人の票数が優先するし、重要人事や国際条約を決める上院は州人口の大小にかかわらず各州2人の代表で構成されていることもそうだ。現代に入って2000年と2016年の2回の選挙で、一般投票で少数だった共和党が大統領を握った。今度またこの時代物の制度によってトランプ再選となると、3回目。民主党候補が共和党候補を上回った得票差は2000年50万、2016年 300万、今回は500万(11日現在)。多数決という民主主義の基本原則はどこへ行ったのかということになる。

ニューヨーク・タイムズ紙12日の国際版によると、同紙は9、10の両日に50州の選挙担当を直接取材し、45州の責任者、残る4州では次の地位の担当者から、一部の細かいトラブルはあったものの全体として選挙は適切に実施されたとの回答を得た。トランプ氏が「不正があった」と提訴した州も、もちろんここの中に含まれている。唯一、テキサス州では繰り返し試みたものの回答は得られなかった。しかし、同州最大で普通の州並みの人口を持つ郡の責任者から選挙はうまくいったとの回答を得た。同州は共和党優位で、トランプ氏と共和党の勝利で終わっているから、新たな訴訟が出てくる可能性はない。

第3次南北戦争

米国は南北戦争(1861~65年)で奴隷制度を廃止した。連邦政府は降伏した南部連合諸州を軍事占領下に置き、奴隷制度の上に築かれた南部の「北部化」に取り掛かった(再建時代と呼ぶ)。しかし、南部諸州では白人至上主義の秘密組織が結成され、凄惨なテロ攻撃で強く抵抗、共和党政権は南部の執拗な抵抗に手を焼き、次第に疲れ果てていく。1876年大統領選挙は接戦となり、共和党は大統領で民主党の譲歩を得るために南部の軍政を取りやめ撤収した。7年間に及んだ「南部再建」は失敗に終わり、黒人は「隔離」という新たな差別に閉じ込められることになった。

約60年が経ち大恐慌のさなかの1932年大統領選挙で民主党ルーズベルトは支持基盤に少数派を取り込んだ。黒人も初めて政治勢力として認められた。それからまた20年余りを経た1950年代半ばを過ぎて、黒人差別反対の公民権運動が起こり、M.L.キング牧師という指導者を得て、白人も加わった運動になって全米へと広がった。民主党政権の下で1964年公民権法、同65年投票権法が成立した。これが第2次南北戦争。

「隔離」から黒人を自由にする法律の枠組はできたが、人種差別はなくなりはしなかった。ことし5月ミネソタ州で白人警官の乱暴な取り締まりによって黒人男性が死亡した事件がまたまた起きて、人種差別に反対し抗議するデモが全米に広がった。

黒人、ヒスパニック、その他の様々な市民団体、民主党などが、警察改革をはじめとして社会構造に組み込まれている差別の撤廃を要求、これをトランプ氏が極左の反社会的運動と非難して鋭い対立が生まれている。個別事件への抗議を超えて構造的差別の解消を求める運動に発展しているので、第3次南北戦争ととらえられている。

「敵ではない、同じ米国人だ」

バイデン氏は投票から4日経った7日夜(日本時間8日午前)、ようやく勝利宣言をした。バイデン氏の勝利演説の内容は日本でも新聞で詳しく報道されている。そのなかでバイデン政権がトランプ政権とは違う方向を目指すことをはっきりと示したところを、いくつか拾ってみた(東京新聞掲載のワシントン共同による演説全文から)。  

▽分断ではなく、融和を目指す大統領になることを誓う。米国は(共和党を支持する)赤い州も(民主党を支持する)青い州もなく、合衆国なのだ。

▽米国の魂を取り戻すため、大統領を目指した。屋台骨である中間層を立て直し、米国が世界で尊敬されるようにし、この国をまとめるためだ(筆者コメント、以下同じ:トランプの「米国を再び偉大な国に」に対して「米国を再び尊敬される国に」を対置)。  

▽(副大統領になるカマラ・ハリスについて)女性として、黒人女性、南アジア系の女性として、移民の娘として、初めてこの国の副大統領に選ばれた。こうしたことがこの国では不可能だと言わないで欲しい(トランプの「白人の国」に対して、女性、移民、非白人などに対する差別のない多様性の国を強調)。

▽ウイルスを封じ込め、繁栄を築き、医療を保障し、構造的な人種差別を米国からなくす闘いがある。気候変動から地球を救い、良識を取り戻し、民主主義を守り、全ての人に公正な機会を与える闘いもある(トランプ氏の非科学に対置)。

「傷」をいやす大統領になれるか

米国は1950年代から70年代初めにかけて、公民権運動とベトナム戦争反対運動が続き、国内は大混乱に陥った。その後ニクソン氏が2回の大統領選挙を制し、内外政の混乱の収拾に取り掛かったが、2期目の途中にウォーターゲート事件で弾劾不可避に追い込まれて辞任し、米国は新たな傷を背負わされた。

1976年大統領選挙で米国民はジョージア州ピーナツ農園主でワシントンとは無関係だったカーターに、傷を癒す「静かな大統領」の任務を託した。カーターはテヘランの米大使館占領事件の解決に失敗、再選をかけた1980年大統領選挙でレーガンに大敗した。カーターの4年をワシントンで取材した経験からは、カーターはあの不運な事件がなければ期待された役割を果たしたと思う。

バイデン氏は民主党予備選のスタートで低迷、左派サンダース氏が独走するのではないかという情勢になっていた。しかし3月のミシガン州予備選で圧勝して息を吹き返した。同州予備選は共和党員の投票も認めていて、対立と分断の時代を「普通に戻そう」と呼びかけるバイデン氏に勝って欲しいと思った共和党員が多数、バイデン氏に投票したのが後押しになったとされている。

そのバイデン氏の勝利演説を聞いて、カーター氏のことを思い出した。

バイデン氏は「傷」をいやす大統領になれるだろうか。カーター氏の時代と大きく違っていることがある。トランプ氏の世界の事実と、バイデン氏の世界の事実は同じではない。ネットが持つ負の機能を操ったトランプが異様なフィクションの世界をつくりだした。事実の共有ができないと対話は成立しない。トランプという人物は何者なのか。

                              (11月12日記)

かねこ・あつお

東京大学文学部卒。共同通信サイゴン支局長、ワシントン支局長、国際局長、常務理事歴任。大阪国際大学教授・学長を務める。専攻は米国外交、国際関係論、メディア論。著書に『国際報道最前線』(リベルタ出版)、『世界を不幸にする原爆カード』(明石書店)、『核と反核の70年―恐怖と幻影のゲームの終焉』(リベルタ出版、2015.8)など。現在、カンボジア教育支援基金会長。

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