コラム/発信
東京・杉並区政と区議会のいま
2026年初春
杉並区議会議員 奥山 たえこ
区外施設の売却
岸本聡子さんが区長選挙を目指す頃、表面化していなかった問題に保養施設等の譲渡がある。前の区長の時代(2021年)に、あり方検討会を庁内で設置し、提供方針を検討していた。それを、岸本区政の時になって手放すことになったものである。
70億が3,500万円に
一つは、「コニファーいわびつ」(旧「すぎなみ自然村」、群馬県吾妻郡。杉並から約3時間)。山あいの広大な土地を切り開いて建てた本館の他に、ログハウスや吊り橋もある、テニスやキャンプも出来る杉並区民の保養施設である。国有地を購入して開発(バブルの時代に税収が入ったので、約70億円かけたと言われている。
その後設備補修などでもかなりの費用がかかっている)し、1994年開設。当初温泉が出るとのふれこみだったが、結局出なかった。しかし2000(平成12) 年になると閣議決定により、自治体の既存の公的宿泊施設は廃止して民営化等するようにと国から要請されたので、直営を廃止した。その後インターネットの普及もあって利用者の低迷などもあり、運営事業者に無償で貸し付けていたが、今般9月に売却としたものである。なお購入者は、すでに杉並区が売却した神奈川県湯河原市の温泉保養施設の事業者であった。
今回の売却収入は3,500万円、これは移転登記費用相当だと言われている。つまり値がつかなかったわけである。一部に、岸本区長は区有財産に対する愛情がないと非難する者があるが、引き取り手があってよかったというのが現実である。なお東日本大震災の折りには、交流自治体である南相馬市の方々の避難場所として半年間提供した(費用はのちに国から補填された)。
富士山麓の校外施設
もう一つは、区立小学校の移動教室として利用されていた校外施設富士学園(1964年開設)である。
こちらは一般競争入札により、10月に2億2千万円余と予想外の高値で落札された。落札事業者は、ヨガなどの講座を運営する会社であり、宿泊型プログラムに利用するとのことである。ちなみに、コニファーいわびつを購入した事業者も入札に参加していたが、順位は2番で金額は5千万円ほど低かった。
なお、当学園は山梨県忍野村にあって、自衛隊駐屯地のそばに立地している。よって令和4年9月に全面施行された「重要土地等調査法」(周辺の土地等の利用状況の調査や規制を行う法律)が規定する「注視区域」内に位置している。ただしこれは、「特別注視区域」とは異なり、売却にあたり事前相談や届出等は義務付けられていない。そうは言っても区は、12月3日の総務財政委員会においてその事情説明をしなかった(入札者には済ませていた)。私奥山は法律との関係に気がついたので、委員会においてその内容と区の懈怠(情報公開に熱心な岸本区政においては奇妙なことである)を追及し、議案には反対した(委員会でも本会議でも可決された)。
この件を他の議員が自分のSNSで発信したため、区は「旧富士学園の売却について(2025年12月5日)」を発表して事情の説明に努めた。
地域の悲願浜田山駅南口整備問題
岸本さんが選挙時に知らなかったものに、浜田山駅南口出口の新設問題がある。これは、区内を走る京王井の頭線の駅で、高架でない地上駅は駅の南北を自由通路で行き来できる構造になっているのだが、浜田山駅だけは行き来が出来ない、北側にしか出口がない。なので南側に行くには、駅のすぐ西側にある踏切を渡るしかないのだけれど、この踏切が、朝など「開かずの踏切」(40分以上開かない)となるのである。すると学校に通う学生が無理に渡ろうとして、まことに危険な状況となる。安全性・利便性向上のため何とかしてほしいという長年の、地元の悲願に前の区長が取組んだ。
駅の南側に出口を作って通路とする、そのための土地を賃借するという計画である。なお出口の工事費は京王電鉄は負担しないという取り決めにした。いくらなんでもそれは交通事業者としてないだろうという指摘が議会からあったのだがそこは考慮されなかった。それでも話は進んで、2022年4月に京王電鉄との間で、「井の頭線浜田山駅南口整備事業に伴う設計等に関する協定書」を締結するに至った。その年の6月に岸本氏が区長に当選。
その後も手続きを進めていたが、12月になって区と地権者の間で、「条件面で協議が整わなかった」ため、その後協定書は解消した。区は地元の人に対して説明会を開催するなどした。昨年2025年12月には、区と京王電鉄による意見交換を実施している。
なお岸本区政は、平成17年に区議会への請願が採択されてからの、この間の経緯の詳細をホームページに掲載している( https://www.city.suginami.tokyo.jp/s094/23757.html )今後どうなるかは不明である。
第五次事業化計画のスタートと署名運動
岸本区長の公約では「住民の合意が得られていないものはいったん停止し、抜本的に見直」すとしたものの、事業認可した道路の計画は、中止することなく土地の買収は進行している。
2025年5月には、杉並区独自の指標に基づいた「都市計画道路の効果検証の結果」を公表した。その目的は、「なぜ東京都にとってこの道路が必要なのかという具体的な根拠となるデータを示す必要があると考えている。しかし、これまでなされていない。今回、技術的にある程度根拠となる数値を示すことで、都市計画道路の役割や整備した場合の効果などを分かりやすく区民の皆さんに知っていただこうと考えた(5月23日本会議区長答弁大意)」。
それによると、東京都の第四次事業化計画の優先整備路線に上がった3本(132号、133号、227号)は、評価点が高くなっている。つまり道路整備の必要性が高いことになる。ただし「整備する順番を決めるものではありません」と書かれている。
この第四次は2025年度までであり、今年2026(令和8)年度からは新しい10年、第五次事業化計画が始まる。そこで、その前の年から東京都は、各自治体に各管内の道路で優先するものを申請するようにと求めた。杉並では区の都市計画審議会で意見を求められ、奥山の所属する会派は、道路整備=建設は不要であると表明した。
この動きを知った高円寺の住民たちは、「高円寺再開発の危機回避のための署名集め」を始めた。曰く「227号線の計画を「優先整備路線」から外し、計画の中止を東京都へ申し出るよう、杉並区に求めます。」。227号線は、高円寺駅の北側にある高円寺純情商店街と庚申通りの商店街を早稲田通りまで貫く幅16mの道路計画である(道路が出来れば、当然商店街は潰される。なお北に位置する中野区ではすでに拡幅工事が済んでいる)。なお、前の田中良区長は「凍結状態にあるものでありまして、それを私が解除するということは今考えておりません。」と、明確に否定している(2018年9月13日本会議)。岸本区長もその方針を踏襲している。けれども反対する人たちからすれば、作らないのであれば申請しなければ良いのであり、今回は10年に一度のチャンスなのだからと訴えており、納得しない。実際、区が227号線を第五次事業化計画に申請したことで、不審感が募っているようである。まだまだ決着を見ることは難しそうである。
「ゆるりと杉並」(ひきこもり支援)始まる
ひきこもりの子どもを抱える親たちの家族会が、2023(令和5)年5月に議会に陳情を出した。ワンストップ相談窓口の創設、当事者が集える居場所の確保、ピアサポーターの育成、継続的できめ細やかな支援の充実などを求める内容であった。6月7日の保健福祉委員会で審査したものの、採択とはならず趣旨採択であった。私は、陳情の審査に当該委員として参加したが、陳情内容の実現には実際の部屋のスペース確保とスタッフなど、そのための多額の予算がかかると思われた。議会が採択すると区長部局は実現に動くことになるのだが、それには困難が伴うと思われた。なので私も趣旨採択を主張した。これは、お気持ちは汲みますという形ばかりのものである。そういう場合、それはそのまま何も対処しないのだけれど、区はそうはしなかった。陳情内容の実現に動き、「ゆるりと杉並」 https://yururi-to-suginami.jp/ として2025年夏に、相談窓口を設置した。区長の指示により進めたと聞いている。実際には居場所は、常設ではなくて月に2回。相談の受付は、メールやLINEなども利用する。そんなふうに工夫して、設置してくれた。まさに住民思いの区長である。
総選挙短かすぎ 緊急表明
今回の第51回総選挙は、解散から16日間しかないという異例の短さであった。杉並では補正予算の審議が間に合わないので、一部は予備費から選挙準備に充当したほどである。そこで岸本さとこ氏含む5人の自治体首長が「衆議院解散に伴う自治体首長の緊急声明」を公表した。その後賛同する首長が続いている。
自治体の現況について、声明で新年度当初予算の編成作業など「年間でも最も業務が集中する時期にある」と言及。国の新年度予算が年度内に成立せずに暫定予算となれば(国からの予算措置が遅れるので)「(自治体の)予算執行に制約が生じ、自治体運営にも大きな影響が及ぶ」と懸念を示した。
選挙までの日程が短く、「自治体の選挙実務は翻弄(ほんろう)されている」と指摘した。さらに投票所入場整理券をいつ住民へ届けられるのかなど、「極めて綱渡りの調整を続けている」と記した。
2026年1月19日
【呼びかけ人(50 音順)】
多摩市長 ・阿部裕行、小田原市長 ・加藤憲一、杉並区長 ・岸本聡子、中野区長 ・酒井直人、
世田谷区長 ・保坂展人
選挙
総選挙
さて、今回の総選挙の結果についてである。
東京8区(杉並区の西側3分の2)では、立憲民主党の吉田はるみさんが、過去2回自民党候補を破り、比例復活さえ許さない程の票差で当選した。それが今回は、自民党の新人候補(前回落選した人)と前回と逆の票差になった。最終日の午後6時過ぎには、高市早苗首相が応援のため阿佐ヶ谷にやってきた。大変な人の集まりだったようだ(ネット動画で見た)。室内集会のために岸田文雄氏も来たらしい。
なお、吉田さんの当選には、野党共闘体制が出来て、統一候補となったことも大きく貢献している。しかし今回、選挙直前に出来た新しい政党である中道改革連合については、安保法制は違憲、原発の再稼働は認めない、辺野古新基地建設反対に関する政策変更について、吉田さん本人がそれを容認しているとの話ではなかったものの、中道の政策に納得がいかないとの声があった。ただし共産党は候補を出すことはしなかった。れいわ新選組からは新人(前年の都議選の立候補者)が出馬した。
区長選挙
昨年末、自民党の現職区議である4期目の大和田伸氏が、予想通り立候補の予定を発表した。45歳の大和田氏は、石原伸晃氏の秘書を務めたのち区議会に転身。2021年には議長を務めた。常に大量得票でほぼトップ当選するなど、広く支持を得ている。
今回当選した自民党代議士門ひろこ氏は、総選挙中はもちろん、現在も駅頭で大和田氏と一緒に街宣をしては、ツイッターにアップしている。「6月は、杉並の未来がかかってます。」由である(区長選挙は6月28日投票)。
区民まんなか杉並の会スタート
区政に関する政治活動のために、2025年11月に政治団体を設立したが、総選挙でしばし止まっていたものの、無事スタートを切ることができた。しかし、高市早苗首相の人気を考えると、かなり厳しいものとなりそうである。
おくやま・たえこ(妙子)
1957年別府市生まれ。実家は八百屋で看板娘。東京都立大学法学部卒業。金融会社、派遣社員、出版社勤務。2003年杉並区議に初当選(無所属)。 23年5月から5期目、単身高齢者の貧困問題に取組む。趣味は焼き鳥屋で読書。
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