特集 ● 混迷に"当たり前"を
EUと欧州議会・ホルムズ海峡危機・ドイツ政治・グローバル進歩連合の結集 (45号継承)
EU議会議員 イエンス・ガイアーさん(SPD)に聞く
聞き手 本誌代表編集委員(日本女子大学名誉教授)住沢 博紀
7.46号への追記
8.21世紀ドイツ社会民主党SPDの抱える問題点
9.SPDの21世紀のプロフィールの構想
10.SPDのFDP化(政権のジュニアパートナーとして衰退)の恐れ
11.世界と連携する日本のリベラル政党の可能性
****45号(5月春号 発信)******
1.緊急質問:ハンガリー、オルバンの敗北とホルムズ海峡封鎖問題
2.欧州議会内の主流4会派と反EU極右政党会派との関係
3.欧州議会の3つの重要政策――エネルギー同盟・銀行同盟・グリーンディール
4.EU官僚主義への批判は正当か?
5.欧州独自の安全保障システム構築の現状
6.EU/NATOとトランプとの関係
7.46号への追記
ドイツ社民党SPD選出の欧州議会議員ガイアーさんへのインタヴィユーは、4月13日に行われました。「現代の理論」46号は8月発信の予定でしたが、10月までずれ込んだため、半年が経過しました。春号でのガイア―さんの発言、EU議会での政党間関係やウクライナ戦争への対応など、日本のメディアでは報道されていないことも多く、多くの反響が寄せられました。この間、グローバルおよび国内の政治状況も大きな変化がありました。しかし第12節「中道改革連合はグローバル進歩連合と連携できるか」を除いて、ガイアーさんの発言は、EU議会の現状やドイツの人々の生活の場からの声を生き生きと伝えているので、日本の読者にとって貴重な情報源となると思います。そのため第12節は11節に再構成してまとめ、あとの節はそのまま発信することにしました。
このインタヴィユーに関連したこの半年の大きな変化は以下の3つに整理できます。
トランプが始めたイラン戦争は、世界的な石油資源の高騰とインフレを引き起し、軍事的にも攻勢も停戦もできない泥沼状態に陥っています。このため中間選挙を控えた先日、インフレ対策という口実でロシアからのデイーゼル輸入やゼレンスキーの大統領退任などプーチン寄りの決定や声明を出し、さらには、公的には確認されてはいませんが、武器弾薬の供給の削減や、ウクライナによるドローン攻撃のための軍事衛星スターリンク利用制限などを実行しているようです。これらに対して、イギリス・カナダやEUのNATO諸国は猛烈なトランプ批判を行い、またアメリカ国内でも批判の輪は広がっています。
トランプの親族がロシアの新興財閥と結びついているという批判は別にして、こうしたトランプの動きは、中間選挙を控えているという以外にも、おそらくウクライナ優勢の戦況は、欧州のNATO諸国に力を与え、ひいてはトランプが目指す米中二極構造をEUが第3勢力として登場して妨げるのではないか、という「恐れ」があるように思われます。アメリカが中間選挙ののち、共和党の一部も含めてトランプのこうした世界像に終止符を打ってくれることを願うばかりです。
それでは欧州のNATO諸国の現状はどうでしょうか。欧州の政治的な安定は、これまで中道右派(伝統的保守や自由主義)と中道左派(社民政党とエコロジー政党)が多数を占めることで成立してきました。しかし今は、左右のポピュリズム政党の登場で、こうした安定は揺らいでいます。その背景には、製造業の衰退や発展から取り残された地域、移民問題など以外に、ウクライナを支援をする政府に対して、和平や財源(支援支出と防衛費増大の両方で)の問題で政府批判をできるという「錯綜」した状況があります。さらにエネルギー価格高騰に対して、ロシアとの和平は安価なエネルギー供給につながるという主張もあります(この点で、ウクライナ支援のEUは、いくつかの国ではロシアの天然ガスや石油を直接・間接になおも輸入しており、中国・インドと並び最大の支援諸国になっているという皮肉な現状)。
左翼はこれまでも分裂してきましたから、リスクはむしろ伝統的保守や自由主義政党にあります。イギリス保守党はファラージ党首のリフォームUK(EU離脱)の攻撃を受け、保守陣営の基盤を失いつつあります。また労働党も地方議会選挙で大敗し危機を迎えましたが、この7月からバーナム首相の労働党政権で安定を取り戻しつつあります。
保守陣営の危機は、末端組織や地方議会において、極右ポピュリズム政党との分断が曖昧になることです。現在の焦点はドイツのメルツ首相率いるキリスト教民主同盟CDUの問題です。詳しくは、本号の福澤報告を見てもらうとして、戦後ドイツも極右の勢力は消えたことはなく、ただ分裂や5%条項を突破できず、結果として保守国民政党CDUに吸収されていった過程があります。21世紀に入り、旧東独の諸州から始まったAfDなどの右翼ポピュリズム政党は、地方議会や州議会に定着し、2025年連邦議会選挙では、CDUの票を奪い(産業衰退地域のSPDからも)、第2党に躍進しました。戦後のCDUへの吸収過程が、逆に保守の分散過程に入っているわけです。
ただドイツの場合は、CDUが戦後のドイツ基本法や立党精神を遵守して、AfDとの峻別を維持する限り、大きなリスクは生まれません。ナチス支配の「ドイツ」の歴史的教訓や、「西ドイツ」の西欧化により、連邦議会全体としては、極右勢力が多数になるワイマールの再来(当時もナチスは過半数ではありません)はありえないからです。問題はむしろフランスです。
来春のフランスの大統領選挙は、いろいろな世論踏査でも、極右国民連合RNを率いるマリーネ・ルペン候補の優勢が伝えられています。マクロン率いる中道与党の「再生」の後継者候補者もルペンの対抗馬としては弱く、メランションなどの左派も同じです。結局、2回目の投票で、右翼政党連合に支持されるルペンに対して、中道派と左派がどこまで連携できるかです。ただルペン国民連合も政権獲得の可能性とともに、EU離脱などの過激な政策は引き下げ、拠出金削減など現実的な政策にトーンダウンしています。
国内的には反移民、反リベラル、しかしEUとは融和政策というイタリアのメローニ首相に似た立場にあるという見解もあり、あるいはフランスの自立を唱えたドゴール主義への復帰であるという意見もあります。しかしロシアに対しては強固な批判者であるメローニと比べて、ウクライナへの資金支援打ち切りを宣言するルペンの登場は、EUやNATOにとって大きなリスクになる可能性はあります。ただ多くの点で法制化され産業・財政・金融制度に根を下ろすEUは、それゆえ一国の「主権回復」を求める意見に多くの賛同はあっても、この流れを逆転させることは不可能に近いといえます。
ドイツ社民党SPDに関しては、10月に大きな出来事があり、財務大臣のクリングバイルと並んで党首であり労働・社会大臣であったベーベル・バースが、この二つのポストを辞職したことです。市民給付制度、年金改革、医療保険制度をめぐり、財政的に多くの制度変更や財政削減を迫られたバースは、本来は左派でありながらも妥協を重ねてきましたが、与党のCDUからの個人攻撃もあり、こうした政治風土に反発して辞職を申し出ました。
後任には、この5月までラインランド=ファルツの首相であったアレキサンダー・シュヴァイツアーがなりましたが、彼は45年の年金支払期間があれば、63歳からの年金給付は権利であるとして、この点でのCDUからの改悪提案を明確に拒否しています。メルツ内閣でのこれからの社会保障改革案の交渉、年末に予定されるSPDの党首選出の行方が、これからのドイツ政治の大きなカギとなります。クリングバイルは人気がなく、男女の複数党首制を維持するなら、大きな転換も想定できるからです。
第3に、中道改革連合、小川淳也代表の4月にスペインで開催されたGPM(グローバルな進歩実現のために)への参加は、一時的なシンボリックな参加で終わりました。中道自体がその後、解体に追い込まれ、立憲民主党系の議員は、新党「民主改革の会」へと移りました。小川代表も政党交付金をめぐる稚拙な対応や、中道の後始末で、新しい展開を切り開くことは不可能でしょう。
旧立憲民主党の時代から、おそらくF.エーベルト財団東京事務所の支援を得て、欧州社民党やアメリカ民主党などのリベラル勢力との接点を求めていました。これは政権交代をめざす野党として大事なことでした。しかし国際的な大会に参加したり、グローバル進歩同盟PAなどにオブザーバーとして名を連ねることも、単に代表の個人的な関心ではなくまず党内で、そうした活動への参加の意義を議論し、多くの賛成を得て初めて政治的な意味を持ちます。今、中道解体からの再出発でこうした活動は当分はむつかしい状況ですが、日本ではリベラルな価値観が多数に承認されながらも、政党として立ち位置が定まっていない状況では、何らかの接点を維持していくことは大事です。そのコアとなるのは、メディア向けの宣伝でも個人のインスタグラムでの発信でもなく、政治家として理念をグローバルに共有することです。そこからすべてが始まります。
8.21世紀ドイツ社会民主党SPDの抱える問題点
住沢 それでは、ドイツにおけるSPDの問題についてです。というのも、ここ4年間の州選挙の結果を掲げましたが、とりわけ最近のバーデン=ヴュルテンベルク州の5.6%という歴史的な敗北、それに、長年政権の座にあったラインラント=プファルツ州でも失いましたし、ニーダーザクセン州もどうなるかわかりません。その理由は何でしょうか?
私の見解では、昨今、組織化された政党体制の解体が進んでいて、その解体プロセスの中では、ポピュリズム的な、人気のあるトップ候補、党の指導者の役割が非常に重要になってきています。とりわけSPDは、保守政党CDU/CSUと政権を争うという立場にもかかわらず、大連立、あるいは3党連立などを余儀なくされ、野党にもなれず、政権内でSPD独自の存在意義も発揮できないというジレンマに追い込まれています。エコロジー派は緑の党へ、左の側からの批判者は左翼党などへ流れています。
もう一つの問題は、メルケル政権から数えてすでに4期目の政権担当政党ですし、ショルツは首相にもなりましたが、多くの大臣を送り込みながらも、人々の信頼や人気を得る政治家が生まれていないということです。現在の二人の党首、ラース・クリングバイルとベーベル・バースは財務大臣と労働・社会大臣という要職を占めていますが、世論調査での人気は低く、SPD色の政策を出してはいますが、最後は妥協に終わり、SPDの存在意義を示すことはできていません。かつては、各州の州首相からも登用された人材がいました。彼らは経験を積んで連邦政治家になったわけですが、そのようなプロセスは今やほとんど消え失せてしまいました。その理由は何でしょうか?
ガイア― それは様々な理由が絡み合っています。バーデン=ヴュルテンベルク州は、今や当然ながら前兆となっています。それは非常に悪い結果です。しかし、説明は可能です。
イェンス・ガイア―さん
州首相の座を巡って、人気のあったこれまでの首相の継承者である緑の党の候補者と保守政党CDUの二人の対立候補に焦点が当てられ、進歩派がセム・オズデミールと緑の党に投票し、彼を望まなかった他の全員がCDUの候補者に投票するという、そうした対立構造があったのです。これは我々にとって非常に恐ろしい結果ですが、この特殊な状況下で生じたものです。
私はラインラント=プファルツ州の方が実はより懸念すべきだと考えています。なぜなら、私たちはそこでシュヴァイツァー氏と共に政権を握っていたからです。彼は非常に尊敬されていた州首相であり、彼の個人的な支持率はより高かったのですが、党への支持率よりも高かったのです。しかし、ラインラント=プファルツ州では政権交代を求める気運がありました。20年経ち、人々は何か違うものを求めていたのです。
私は今、個々の結果を一つひとつ説明したり、その影響を和らげたりするつもりは全くありません。ただ、結果には大きなばらつきがあること、そして、連邦レベルでのSPDの支持率が、必ずしもSPDの全国的な支持状況を反映しているわけではないことを、はっきりさせておきたいのです。つまり、私たちは地方選挙で勝利しています。ミュンヘンでは敗れました。それは痛手でした。しかしケルンでは勝利しました、つまり、SPDはまだ勝てるということです。ただ、我々は非常に複雑な政治状況の中にいるだけです。10年前までは確実だったことが、今日ではもはや確実ではないのです。
私たちは先ほど、外交政策に関連してそのことについて非常に多くを語り合いました。もちろん、ドイツの人々も、たとえ政治に詳しくなく、あるいは興味がなくても、そのことを肌で感じています。しかし、私たちのすぐ隣のウクライナで戦争が行われており、イラン情勢の対立によって次の戦争が迫っていること、それがドイツの経済状況に直接影響を及ぼし、ガソリンが突然高騰したり、家庭の暖房に使われる化石燃料が高くなったり、あるいは、 天然ガスから作られる電気代が高くなる。みんなそれを実感している。そして、彼らはそれを喜んではいません。
そして、ある政党(AfDを指す)がやってきて、「私たちが政権を握れば、すべてが以前のように戻ると約束します。ロシアとまた仲良くなって、ロシアがまた天然ガスをすごく安く売ってくれるから、すべての悩みは解消される」と。世界のことなんてあまり深く考えず、ただ自分の経済状況だけを見て、「将来、どうやっていけばいいんだ?」と問う人々。彼らが大きな不安を抱えているのは、私には理解できます。そして、人々に「彼らの言うことを聞かないで。彼らはあなたたちのことを考えていない」と伝えることも、政治家としての私の役割です。もちろん、人々が不満を抱えていると、その不満を表現するような行動をとりがちで、政治的に本当に賢明で先見の明のある振る舞いはしないものです。それが一点目です。
二つ目は、これはますます重要になってきていると思います。ここで少し歴史に触れなければなりません。もちろん、1945年、ドイツは壊滅状態でした。それは経済的にも底辺にあり、道徳的にも底辺にあり、政治的にも底辺にありました。そして、それからの80年間で、ドイツは認められた強力な経済大国となり、国際社会において認められた国となりました。
しかし、私たちの家庭では、それは常に、親が子供たちにこう言うことを意味していました。「君たちの生活はいつかもっと良くなるよ。君たちがいつかより良い生活を送れるように、僕たちは働いているんだ。君たちはもっとお金を持ち、経済的にもより良い立場に立てるようになる。ドイツは政治的にも経済的にも良くなる。君たちは僕たちよりも多くのものを手に入れられるようになる」と。それが常に『進歩の約束』だった。ドイツではそう呼ばれるもので、親たちがこう言っていました。「君たちがいつかより良い生活を送れるように、僕たちは働いている。今、私たちが家を建てているのは、君たちがそれを相続するためだ」と。つまり、一言で言えばそういうことです。
そして、若い世代は親の世代よりも良くなるだろうというこの確信は、もう消え去ってしまった。つまり、ドイツでは多くの人が、社会・経済の発展はすでにピークを過ぎ、これからは悪くなるだけだと感じています。彼らはそれを恐れていて、「政府はすべてを間違っている」「間違った原則に基づいて動いている」「我々にはもっと良い案がある」と言うような人々の言葉を喜んで信じる。そして、その根本的な理由は、ドイツに外国人が多すぎるから、などなど、といったことにあります。
右派ポピュリスト側から聞かされる、こうした馬鹿げた話の数々、たとえ多くの人々がそれを信じているとしても―ドイツの人口の12~15パーセントはファシスト的な世界観を持っており、極右が望むことが正しいと信じているのです。さらに、それ以外にも「このままではいけない」と言う人々が大勢います。そう、この「このままではいけない、このままでは絶対に続かない」という感情の表れこそが、極右勢力への高い支持率なのです。そしてそれは当然、他の政党の犠牲の上に成り立っています。私たちの党の犠牲にもなっています。そして、そこには、ある種の心理的な原因があるのです。
住沢博紀
住沢 しかし現在のメルツ連立内閣では、クリングバイル党首は、財務大臣兼副首相というポジションでSPDの政策や政治を体現しています。しかし例えば、ホルムズ海峡封鎖に際してガソリンが高騰しているとき、彼は不当に収益を上げているエネルギー企業にたいして、その臨時収益を税として消費者に還元させるべきと主張していますが、その本気度が疑われています。
ガイア― まず、自分たちが何を望んでいるのかを明確にしなければなりません。しかしそれを連立相手に強制するかどうかは別の問題です。もし私たちが本当に何を望んでいるのかを説明できなくなれば、非常に難しくなります。そうなると、この連立パートナーとそれを実現できるかどうかは全く別の問題になります。しかし、まずは国民のために何を望んでいるのかを明確に表明するのが当然です。
最終的には、もちろん権力の問題です。しかしガソリンスタンドの価格保証の問題でこの政権を崩壊させるわけにはいきません。私は歴史家ですから、1930年には失業保険の数パーセントをめぐる問題で政権を倒しました。その後は歴史が物語っています。ですから、今は国内の政治情勢に対処しなければなりません。もちろん、国民は私たちが政治問題を解決することを期待しています。政権を倒すことを期待しているわけではありませんが、解決策を求めているのです。私たちは解決策を提示することはできますし、メルツ氏と経済大臣のライヒ氏にはそれがなぜうまくいかないのかを説明してもらうことができます。そしてこの解決策が正しいかどうかについて、国内で政治的な議論を続けることもできます。しかし、こんなことで政権を倒すことはできません。それはドイツの人々が好まないことです。
住沢 第二次世界大戦後のドイツの成長期には、2つの大きな国民政党と、自由主義政党、のちにはエコロジー政党と旧東独政党などいくつかの政党という構図が、ある意味で定着していました。しかし、ワイマール時代には、左派から右派まで様々な政党が存在していました。現在のドイツの政党情勢は、まさにワイマール時代とよく似ています。しかし、当時は社会民主党に、労働者の側に立つ経済民主主義や社会的法治国家といった明確な理論やアイデンティティがありました。今日、SPDのアイデンティティとは一体何なのでしょうか?
ガイア― 私たちは権威も、そして、アイデンティティも失っていません。私たちは依然として、左派の国民的政党です。15%の支持率ではもはや国民的政党とは言えない、と言う人もいるかもしれません。でも私たちは依然として、ドイツにおける社会的・進歩的な進歩を求める進歩派陣営の、主導的な勢力です。そして、SPDも今、新しい基本綱領に向けたプロセスを、あるいはすでに始めているわけです。そして、その場での我々の存在感をさらに際立たせて、対外的に何らかの形でより明確に輪郭を描いていきたいのです。
9.SPDの21世紀のプロフィールの構想
住沢 ええ、21世紀のSPDの「プロフィール」とは何でしょうか?具体的に、どういうことですか?
ガイア― それが今のあなたの質問ですね。 そうですね、私たちはヨーロッパの隣国と、欧州連合(EU)における協力において、非常に緊密な関係を築いています。私たちは、ドイツの経済・社会システムが、達成可能な最大限の公正さとはいえないと考えています。また、欧州連合(EU)における女性の平等は、依然として不十分であると考えています。私たちは、環境と気候を保護しなければならないと考えています。なぜなら、この地球を台無しにしてしまったとしても、移り住めるような別の惑星は存在しないからです。そして、これらすべての点は、この組み合わせでSPDにしか見られないものです。
CDUは「このまま進め、うまくいかなかったらその時に直せばいい」と言っています。緑の党は、主に気候問題に取り組んでいますが、経済成長の促進には関心がありません。その点、私たちは産業界との協力により重点を置いています。私たちはもはや、資本主義に対して、根本的に否定的な姿勢をとっていません。しかし、私はまた、少なくともそう願っているのですが、次回のSPD党綱領には再びこう明記されるべきだと思います。「我々は民主的社会主義の党である」。この言葉には、少なくとも私の理解では、今日の資本主義のあり方が人類の発展の頂点ではない、という考えが表れています。
私たちは、より公正な社会を想像することができます。より文明的な社会、より平和な社会、より平等な社会を想像することができるのです。例えば、貧富の格差がそれほど大きくない、より平等な社会は、より平和な社会でもあることがわかります。富の分配という点で、はるかに平等なスカンジナビア諸国社会に、そのことが見て取れます。そして、私はそこを目指すべきだと思います。
これらは毎日、新聞で議論されているような問題ではありません。そこには別の問題があり、現時点では、それを擁護すべきことが多く、先取りして議論すべきことではないのです。だからこそ、物事の輪郭が曖昧になっている、と見なされることもあるかもしれません。しかし私たちは依然として情熱的で確固たる社会民主党員です。なぜなら、私たちが目指すものは、社会にとってより良いものだと信じているからです。
10.SPDのFDP化(政権のジュニアパートナーとして衰退)の恐れ
住沢 私は、これからのSPDが、現在のFDPのような状況――つまり、与党の「ジュニア政党」のような立場になり、多党化の中で自由主義政党という存在意義を失い、最終的には5%の障壁を超えられず衰退してゆく政党というシナリオです。最悪のシナリオで先の話ですが。以前は政権交代を目指す野党として活動、そして政権政党としての自覚された役割でした。
しかし2013年~2017年、2018~2021年と、メルケルCDUとの大連立政権をよぎなくされます。2021年~2025年はSPDショルツが首相ですが、緑の党と新自由主義のFDPの3党連立で、結局、FDPのリンドナー財務相の2025年政府予算案拒否で、任期終了前の解散に追い込まれます。2025年選挙では16.4%と、極右AfDの20.8%につぐ第3党に落ちてしましました。それでもメルツCDU首相との大連立(今やこの言葉も死語ですが)に再び追い込まれます。要するに、SPDは政権のジュニアパートナーの位置に、党内の多くも望まないままに、中道政治を維持するためにほかの選択肢はなく、陥ってしまったわけです。メルツ政権は人気がなく国民から常に批判される存在になっています。ウクライナ戦争やイラン戦争で経済成長が見込めないからです。だから与党であることはメリットではなく、むしろデメリットになってしまうのです。
私は問題は選挙での得票数減少だけではなく、与党に安住する党内の政治家が行政組織の一員になってしまっていると危惧しています。これは多くの州レベルでも、多党化の中でSPDはほとんどの州で連立政権に入り、大臣職を担っています。ニーダーザクセン、ブランデンブルク、メクレンブルク・フォアポンメルン、ザールランド、ハンブルク、ブレーメンとまだ6つの州で首相となっている点が、かつてのFDPとは異なり将来への希望です。
ガイア― つまり、FDPは衰退しつつある政党ですね。左派リベラルな政党として、緑の党があります。彼らがその領域を占めていて、FDPにはもはや独自の政治的な提案が全くないんです。それが彼らの問題でした。FDPは常にDUを原則的な連立パートナーと宣言してきました。彼らはドイツの富裕層に媚びてきました。彼らは増税を防ぎ、お金持ちの分配条件を何らかの形で改善することを常に阻止しようとしてきました。そうすることで政治的に生き残れると信じていたわけです。しかし今や連邦議会から2回目の追い出しに会い(5%に達せず議席ゼロ)彼らにはもはや、元財務大臣のリンドナーのような頼れるカリスマ性といった人物が、もういないわけですね。
今立候補しているのは、私の出身州であるノルトライン=ヴェストファーレン州出身の候補者です。何より、誰も彼を知らないし、クビツキ氏は時代遅れの男です。彼の立ち居振る舞いも、価値観も、そして女性への接し方といったアプローチもね。これは本当に、ごく少数のマチョたちに向けた政治的な提案に過ぎない。マチズモ、つまりスペイン語で言うところの本当に権力意識の強い、男性たちのことです。そして、FDPはこうした状況下では生き残れないと私は考えている。
住沢 しかしオランダでは、長年、SPDのパートナーであった伝統的な労働党が緑の党と合同するという、人によっては吸収されたとも言いますが、事態が起こっています。
ガイア― つまり彼らは今、原則的な連立を組んだわけですね。まだ一つの政党に統合されるようには見えませんが、理にかなう場面では、選挙連合として立候補しています。オランダの内政状況についてあまり詳しくないので、それを判断するのはおこがましいですが。ただ、原則として、他の政党とそれほど緊密に協力するのは難しいと思います。なぜなら、それによって党の独自性がさらに弱まってしまうからです。
私は、産業基盤の必要性を信じている人間です。SPDが労働組合に組織された労働者との連携を失えば、私たちは終わりだと考えています。つまり、私たちは彼らの利益を代表するために存在しているのです。そして、それが信じられなければ、私たちは深刻な問題を抱えることになります。だからこそ、私たちこそが必要な気候保護——これは絶対に正しいことだと私は考えています——に、産業的な要素を加え、つまり、気候保護と産業は両立するのだと訴える存在でなければならないのです。それが私たちの使命であり、それを果たさなければならないのです。
住沢 おっしゃることは理解できます。でも15年ほど前には、例えばジグマール・ガブリエル(2009年~2017年SPD党首)が、社会主義インターナショナルに対して新しい進歩同盟(プログレッシブ・アライアンス、PA)を提唱しようとしていました。社会主義インターはアフリカの複数の独裁者も加盟政党となっており、これらを除名できない社会主義インターに対して、別組織、進歩という近代の包括的な理想とか理念とか、そういうものに基づいた新しい国際組織を、イギリス労働党やスウェーデン社民党などとともに立ち上げました。今では社会主義インターと並ぶ、もう一つのグローバルな社民・リベラル政党の国際組織となっています。
ガイア― その通り。20世紀の頃の議論は社会主義をめぐるのだった。でも、今はそうじゃないってこと。でもPAなら、それは可能です。それが進むべき道だと思います。というのも、もはや世界的に、資本主義と社会主義という、力を結集しなければならないような激しい社会政治的対立は存在しないからです。東西の対立はもうありません。私たちは、はるかに複雑な政治状況と、はるかに複雑な政治的課題に直面しています。ですから、世界的な政治問題をどう解決するかという点で、理想を共有できる相手と協力すべきだと思います。そう、そして、そうした政治勢力は、特定の陣営に集中しているわけではありません。しかし、進歩派と保守派を対立させて考えるなら、確かにそうですが、進歩派は社会民主党だけではありません。
11.世界と連携する日本のリベラル政党の可能性
住沢 そういう話がありましたね。日本でも、左派とみなされる研究者にも、「リベラリズムは死んだ」という人が出てきています。少なくともここ日本では、リベラリズムのような立場、日本の右傾化する政治風土の中では発展の可能性はないという人は多いです。リベラリズムの内実を知っているかどうかは疑問ですが。
ガイア― そうですね。でも私の言いたいのは、冷戦終結後の東欧において、彼らは、自らの言葉によれば、共通の理想や社会主義というよりも、はるかに広い次元のものだったということです。そして、あなたの意見では、SPDはそうした文脈を踏まえて、新たな基本方針を党の特色として提示すべきだということですね。なぜなら、SPDは単に社会主義や、いわゆる市民社会といった共通の理想ではなく、平和などと共に、ある種の良好な生活環境を重視していると言っていたからです。そうすれば、SPDは新しい基本綱領を独自のアイデンティティとして提示できるはずです。
私の考えでは、この基本綱領は、現在の政治的課題を描き出し、それに対してより多くの正義と平等を生み出す、社会政治的かつ進歩的な解決策を見出すという役割を担うべきです。デジタル化に関わるあらゆることを考えてみてください。私たちには、それに対する一貫した政策的な回答がありません。しかし、私たちは「デジタル民主主義の党」になることができるはずです。そのためには、欧州協力という環境の中で、将来の経済力という構想と結びつけるための、政策的な、ツールが必要です。私は、それが私の党にしかできないことだと信じており、そこにチャンスがあると考えています。
住沢 そうですね。これは難しい問題です。というのも、日本国内でも、新聞の読者数はこの間に半滅する、あるいはそれ以上の状況で、テレビ番組の時間も限られています。つまりスマートフォンで、一部を切りとった報道やニュース、あるいはいわゆるフェイクニュースのようなものを含んだSNSに影響される傾向があるからです。それに、特に若い世代は政治とかそういうものに対する経験がない。だから、若い世代に対して、政治や世界の現実を、つまり政党や党指導部が新しい政策やプログラムを策定しようとしているようなことを、どう伝えればいいのか、すごく難しい。
ガイア― 今の時代、若い世代の心の奥底に届くようにするのは難しいよね。ですから、単なる基本綱領だけでなく、それ以外の要素も必要だったんです。特にSPDの牙城であるラインラント、つまりノルトライン=ヴェストファーレン州では、前回の地方選挙で、個々の自治体においてAfDが過半数を獲得したり、SPDを上回ったりする危険性が非常に高かったのです。かつては労働者層から多くの票を集めることができた。つまり、そんな時代、そんな状況下で、SPDはどうやって生き残ることができたのでしょうか?それは、19世紀や20世紀の名残のようなもので、労働運動やその他の選択肢に対するものでした。
先ほど、ドイツでなぜ右派ポピュリズムが今、勢力を伸ばしているのかについて、その現象や理由について話し合いましたね。そして、私がそこで答えたことは、労働者たちの気分とも関係があると思います。つまり、人々の一般的な不満について私が述べたこと、そして、進歩の約束が色あせつつあることについて私が述べたこと、そのすべてが、労働者たちの生活の実態なのです。
私はルール地方、エッセン出身です。私の住む街の隣にあるデュイスブルクとゲルゼンキルヒェンの2つの都市では、地方選挙の最終段階で、市長選の決選投票が社会民主党員とファシストの間で行われました。そしてもちろん、デュイスブルクやゲルゼンキルヒェンのような都市で、社会民主党員がファシストと決選投票を戦わなければならないというのはそれは危機の兆候です。
そうですね。前のシュルツ赤・緑・黄の政権において、立法機関ではいわゆるグリーンディールの一環として、気候変動対策に関する多くの先進的な法律が可決されました。これらの法律は、当然ながら、世界の競合他社がこれらの規制に従う必要がないため、欧州産業の競争環境を複雑化させています。同時に、パンデミックとウクライナ戦争という二つの大きな危機も発生しました。これらの問題、あるいはむしろ三つの問題すべてが相互に影響し合い、欧州産業の生産環境を著しく制約しています。そして今、私たちは代替策を講じる必要があります。つまり、気候変動対策を維持し、いわゆる脱炭素化の道筋を前進させ続けなければなりません。しかし、産業界を巻き込み、破壊しない方法でこれを実現しなければなりません。これらが、現在最も大きな課題であり、最も議論の的となっている点です。
住沢 中道改革連合の小川淳也代表は、私の印象では、保守ではないにせよリベラルというイメージはあまりありませんでした。その意味では中道改革連合には適切な政治家かもしれません。しかし選挙直前に結成されたこの政党は、理念と政策、選挙基盤など、あらゆる点で脆弱でした。中道改革連合は、選挙目当ての合体であるという選挙民の批判的な見方は今なお強く、そのため参議院の立憲民主党は新党に合流していません。他方で政策面で見れば、合同前の二つの政党は大きな違いなく、私は、政党の合同ではなく、衆議院の統一会派として再組織すればいいのではと提言しています。
立憲民主党のもう一つの問題は、若者世代はリベラルな価値観をもちながらも、立憲民主党のプロフィールが明確ではなかったことです。ポピュリスト政党のような、人々に直接的な利益をもたらす要求ではなく、政府を批判する、「非生産的、ネガティブな政党」というイメージを持たれていました。
そこで小川代表が、4月16日、スペインで開催されたGPM(グローバルな進歩実現のために)に参加したことは、大きな意味を持ちます。第一に、自分たちの政党の基本理念や立ち位置(進歩的)を明確にできること、第2に、国内政治の枠組みだけではなく、グローバルな連携を模索できること、そしてブラジル、ルーラ大統領やアメリカ民主党の議員参加なども関連させ、リベラルや進歩の意味を日本の若者世代にもイメージさせ、伝達できることなどがあります。特にトランプ時代にあって、明確なトランプ批判の立場に立つことは、批判する人もいるだろうが、賛同する人のほうが多いと思います。
ガイア― 世界には、ある種の価値観を共有する政治勢力がかなり多く存在すると私は考えています。そして、これらの政治勢力は、もはや共通のイデオロギー概念に還元することはできません。
東欧を見ればわかると思いますが、今は少し状況が軟化していますが、実際に存在していた社会主義が崩壊した後、多くの共産党が社会民主主義の道を模索しました。つまり、逆に言えば、スロバキア、ポーランド、ルーマニアで進歩的な考えを持っていた人々は、社会民主党には入党しませんでした。なぜなら、共産党が社民党になっても、彼らは過去に囚われた人々で溢れていたからです。
これは、ドイツや日本におけるリベラリズムの理解とはほとんど関係がありません。
つまり、社会民主主義や自由主義といった、たった一つの政治用語が存在し、その背後に非常に似通った政治形態が存在するという考え方を少し手放す必要があるということです。つまり、逆に言えば、世界中の政治勢力の中に、左派リベラルでも、環境保護主義でも、社会民主主義でもないところに、進歩的な思想を見出すことができるということです。そして、こうした勢力のためのフォーラムを作ること、お互いに意見を交換できる場を作ることは、正しいことです。
例えば、アメリカの民主党の左派から始めることができます。これは、古典的な社会民主主義政党の枠を超えています。緑の党も、もし私たちと協力したいのであれば、参加できます。つまり、労働組合、シンクタンク、解放運動団体、公正な社会を提唱するNGOなども含まれます。そして、それは新しい政党や、変貌を遂げた既存政党にも当てはまります。現在日本で起きている国内政治の動向については、私たちに合う政党があると断言できるほど詳しくは把握していません。このようなフォーラムにおいては、「もし彼らがこれをすれば、あれをすれば、彼らは私たちの一員だ」というチェックボックスにチェックを入れるようなやり方は避けるべきです。まずは提案をし、「もし私たちと協力したいのであれば、もし私たちの他の組織と目標を共有できるのであれば、お互いに話し合い、互いの立場から学び、意見を交換しましょう」と言うべきです。そうすることで、より緊密な協力が可能かどうかが明らかになるでしょう。
イェンス・ガイア―
1961年生まれ。ボッフム大学卒業後、SPD党首などのアシスタントとして活動。2009年から、エッセン市のあるノルトライン・ヴェストファーレン州から欧州議会議員として選出され、2017年から現在まで欧州社会民主進歩同盟内のSPDリーダーとして活動。担当領域は、産業とエネルギー、環境政策の分野で、日本とアメリカを結ぶ国会議員連盟の一員で、日本には何度も訪問して知己の議員も多い。
すみざわ・ひろき
1948年生まれ。京都大学法学部卒業後、フランクフルト大学で博士号取得。日本女子大学教授を経て名誉教授。本誌代表編集委員、(社)生活経済政策研究所監事。専攻は社会民主主義論、地域政党論、生活公共論。主な著作に『グローバル化と政治のイノベーション』(編著、ミネルヴァ書房、2003)、『脱成長の地域再生』(共著 NTT出版、2010年)、『組合―その力を地域社会の資源へ』(編著、イマジン出版2013年)など。
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